新規の光力学的コーティング処理法により患者周囲環境表面の微生物量が減少し、そのために病原体のさらなる伝播のリスクが抑制される:2 病院における実地研究

2020.01.31

Novel photodynamic coating reduces the bioburden on near-patient surfaces thereby reducing the risk for onward pathogen transmission: a field study in two hospitals


A. Eichner*, T. Holzmann, D.B. Eckl, F. Zeman, M. Koller, M. Huber, S. Pemmerl, W. Schneider-Brachert, W. Bäumler
*University Medical Centre, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 85-91
背景
患者周囲環境の表面は、病院獲得感染症の感染源として認識されている。患者周囲環境表面は、微生物汚染のリザーバとなり、これを介して保菌患者または感染患者から、感受性を有する患者に病原体が伝播する可能性がある。ルーチンの表面消毒だけでは結果として病原体の一時的な根絶が得られるのみであり、必然的に消毒と消毒の間の短期間での再汚染は避けられない。
目的
光線力学に基づく新規の抗菌コーティングを、実験室条件下、およびその後に 2 病院の実臨床条件下における実地研究により検証した。
方法
同一の表面に対して、光力学的コーティングまたは対照コーティングを施した。細菌数(コロニー形成単位[cfu]/cm²)の評価を、最長 6 か月にわたり定期的に行った。
結果
実験室での研究から、いくつかのヒト病原体に平均で最高 4.0 ±0.3 log10の減少が示された。患者周囲環境についての実地研究では、すべての対照コーティングにおける細菌数は平均で 6.1 ±24.7 cfu/cm² であることが示された。光力学的コーティングの場合の細菌数の平均は(1.9 ± 2.8 cfu/cm²)、有意に低いことが示された(P < 0.001)。2.5 cfu/cm² または 5 cfu/cm² というベンチマークを考慮すると、表面上における高細菌数の相対リスク低下は、それぞれ 48%(オッズ比 0.38、P < 0.001)および 67%(オッズ比 0.27、P < 0.001)であった。
結論
光力学的コーティングをルーチンの衛生策に加えて利用することで、患者周囲環境表面上の細菌数に、特に細菌数が大きい場合に、有意かつ持続的な減少が認められた。本概念実証研究で得られた有望な結果は、この新規技術が病院獲得感染症の頻度にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、さらなる研究が必要であることを強調している。
サマリーの原文(英語)はこちら
監訳者コメント
患者周囲環境の表面に付着あるいは定着している細菌を殺す試みはすでに 20 年以上前からあり、耐性菌や一般細菌に対する抗菌布や抗菌テープ等が現在でも市販されている。本論文では病院環境における環境汚染の程度が光力学コーティング処理で有意に減少することを証明しているが、この減少がどの程度病院内における交差感染に影響しているかは全く不明である。本当にわれわれが必要としているデータは環境のコロニー数が減ることは勿論のことであるが、当該細菌による交差感染が減ることであり、臨床的なアウトカムがどうなるかが知りたいところである。

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