成人および小児のあらゆる状況において尿路感染症予防のために水分補給を増やす:システマティックレビュー★★

2020.01.31

Increased fluid intake for the prevention of urinary tract infection in adults and children in all settings: a systematic review


O. Fasugba*, B.G. Mitchell, E. McInnes, J. Koerner, A.C. Cheng, H. Cheng, S. Middleton
*St Vincent’s Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 68-77
背景
尿路感染症(UTI)予防のための抗菌薬を用いない介入は、UTI に対する抗菌薬処方と、それに伴う抗菌薬耐性の発現を抑えるための戦略として研究されてきた。水分補給を増やすことは UTI 予防のために広く推奨されているが、その有効性を示すエビデンスは知られていない。
目的
あらゆる状況の成人および小児における UTI に対する予防的介入として水分補給を増やすことの有効性に関する発表文献のシステマティックレビューを行うこと。
方法
5 つの電子データベースを設立時から 2019 年 2 月までについて検索し、UTI 予防における大量の水分補給(≧ 1.5 L/24 時間)と通常/少量の水分補給(< 1.5 L/24 時間)の有効性を評価した、発表済みのランダム化比較試験(RCT)および準実験研究を特定した。アウトカムは UTI の発生率とした。バイアスのリスクを、Cochrane Collaboration のツールを用いて評価した。特定された研究の件数が少なかったため、メタアナリシスはできなかった。したがって、ナラティブ統合を行った。
結果
関連する可能性のあった 2,822 報の論文中、RCT(個別無作為化試験)1 報およびクラスター RCT 1 報の 2 報が組み入れに適格であった。いずれの研究も、参加者、設定、サンプルサイズ、UTI の定義、および介入が異なっていた。RCT はバイアスのリスクは低いと評価されたのに対し、クラスター RCT はバイアスのリスクが高かった。プライマリケア診療所を受診した健康な閉経前女性を組み入れた RCT の方のみで、大量の水分補給に UTI 予防における統計学的有意な効果が示された。
結論
十分に適切な検出力を有する頑健な RCT がないことは、この介入のUTI 予防における有効性についてさらなる研究が必要であることを強調している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
尿路感染症(UTI)は最もありふれた感染症であり、大半の例において抗菌薬が投与される。英国で処方される抗菌薬の 21%を UTI が占めており、成人女性の 3 人に 1 人は 24 歳になるまでに必ず一度は抗菌薬投与を受けているとされている。世界的に抗菌薬耐性が問題視されているなかで、UTI の予防は患者にとっても、医療費においても、メリットは大きい。UTI は反復することが多く、日常的に尿路感染症の患者に水分をとにかく多めに取り、尿量を増やすように外来で指導しているが、実は適切に無作為化された研究がないのが実情であることを示す論文である。

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