低栄養状態と脊椎手術後の手術部位感染症との関連:システマティックレビューとメタアナリシス
Association of malnutrition with surgical site infection following spinal surgery: systematic review and metaanalysis
A.G. Tsantes*, D.V. Papadopoulos, T. Lytras, A.E. Tsantes, A.F. Mavrogenis, P. Koulouvaris, I.D. Gelalis, A. Ploumis, A.V. Korompilias, T. Benzakour, G. Tsivgoulis, S. Bonovas
*Attikon University Hospital, Greece
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 111-119
背景
脊椎手術後の手術部位感染症(SSI)は、臨床的に頻度の高い問題であり、臨床的および社会経済的に重大な帰結をもたらす。低栄養状態は、他のさまざまな外科手技において SSI と関連づけられている。
目的
低栄養状態が脊椎手術後の SSI のリスク因子であるかどうかを検討すること。
方法
2 つの電子データベース(PUBMED、SCOPUS)および Cochrane Library に登録されている文献について、設立時から 2019 年 5 月の間で系統的に検索を行った。脊椎手術を受けた患者を対象に、SSI のリスク因子として低栄養状態を評価したコホート研究および症例対象研究を、組み入れに適格とした。低栄養状態は臨床検査値や国際疾病分類第 9 版(ICD-9)の関連コードにより定義した。SSI を対象とするアウトカムとし、2 名の評価者が独立して研究データを抽出、各研究におけるバイアスのリスクを評価した。ランダム効果モデルを用いて、プールした効果を推定した。
結果
合計で、22 報の研究(後向きコホート研究 20 報、症例対照研究 2 報)、患者 175,000 例以上(うち 2.14%が術後 SSI を発症)が解析対象となった。SSIの発症率は低栄養状態の患者の方が高かった(オッズ比[OR]2.31、95%信頼区間[CI]1.75 ~ 3.05)。術前の低栄養状態は、胸腰椎および仙骨部手術を受けた患者において SSI と有意に関連した一方、頸椎手術を受けた患者では有意差は認められなかった。サブグループ解析では、病院ベースの研究(OR 3.16、95%CI 1.84 ~ 5.43)および集団ベースの研究(OR 2.00、95%CI 1.63 ~ 2.46)の両方で同様の結果が認められた。
結論
低栄養状態は、脊椎手術後の SSI 発症のリスク上昇と関連する。術前の栄養状態の改善によって SSI 発生率を下げられるかどうかを調べるために、さらなる質の高い研究が必要である。
サマリーの原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
低栄養状態と脊椎手術後の SSI 発症リスクについて、今回得られた結果は実際の臨床上でもおよそ頷けるところであろう。低栄養状態からみた SSI 発症率低下のための方法の工夫が、今後も求められる。
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