ロンドンの大規模な国民保健サービス(NHS)Trust の入院患者におけるカルバペネマーゼ産生菌保菌率を明らかにするための点有病率調査★

2020.01.31

A point prevalence study to determine the inpatient rate of carbapenemase-producing organisms at a large London NHS Trust


J. Henderson*, H. Ciesielczuk, S.M. Nelson, M. Wilks, M.N. Cummins
*Barts Health NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 12-19
背景
過去 10 年間に英国におけるカルバペネマーゼ産生菌種の増加が認められている。これらのうち、エンテロバクター目の“5 大”カルバペネマーゼ(KPC 型、OXA-48 型、IMP 型、VIM 型、NDM 型)が、もっとも頻度が高いと報告されており、さまざまな反応性スクリーニング、アウトブレイク、入院患者サーベイランス、診断用検体により同定されている。
目的
4 つのロンドン自治区(Tower Hamlets、Newham、Redbridge、Waltham Forest)の患者 250 万例を収容する Barts Health 国民保健サービス(NHS)トラストにおいて、点有病率調査により、入院患者のカルバペネマーゼ産生菌保菌率を明らかにすることを目的とした。
方法
同意が得られた患者の直腸スワブを採取し、同時に、病棟の医学専門領域、患者の出生国、海外渡航歴、入院期間、および過去の入院歴の詳細を収集した。スワブ検体を増菌培養し、mSuperCARBA 選択培地で 2 次培養した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法により、すべてのエンテロバクター目(Enterobacterales)、アシネトバクター(Acinetobacter)属菌、シュードモナス(Pseudomonas)属菌を同定し、EUCAST(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)ガイドラインに従い、ディスク拡散法により抗菌薬感受性試験を実施した。以前に発表した逆転写 PCR 法の修正版を用いて、全分離株で“5 大”カルバペネマーゼのスクリーニングを実施した。
結果
検査を受けた入院患者 977 例のうち、30 例の検体から 35 件のカルバペネマーゼ産生菌が分離された。もっとも検出頻度の高いカルバペネマーゼは NDM 型で、OXA-48 型が続き、全体の保菌率は 3.1%であった。分離された細菌は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)であった。腎疾患病棟および高齢者ケア病棟の患者において、カルバペネマーゼ産生菌保菌率がもっとも高かったのに対し、集中治療室における保菌率は低かった。統計解析では、海外での入院歴、あらゆる入院歴、海外旅行(とくに、インド、パキスタン、バングラデシュへの旅行)が、カルバペネマーゼ産生菌保菌リスクの増大と関連することが確認された。
結論
Barts Health NHS Trust において、NDM 型、OXA-48 型カルバペネマーゼなどを産生する カルバペネマーゼ産生菌の全体的な保菌率は 3.1%であり、ロンドンでの他の研究と同等である。腎疾患患者や高齢者でカルバペネマーゼ産生菌の負荷がもっとも高く、一方で、入院歴や海外への渡航歴はカルバペネマーゼ産生菌保菌リスクの増大と関連した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
英国はインドなど英国連邦の国との結びつきが未だに深く、NDM 型などの陽性例などがその特徴を表している。

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