疫学データと全ゲノムシークエンシングによるゲノム変異体を用いたバンコマイシン耐性腸球菌( vancomycin-resistant Enterococcus)の伝播経路のベイズ論に基づく再構築

2019.12.24

Bayesian reconstruction of a vancomycin-resistant Enterococcus transmission route using epidemiologic data and genomic variants from whole genome sequencing


Y. Fujikura* , T. Hamamoto, A. Kanayama, K. Kaku, J. Yamagishi, A. Kawana
* National Defense Medical College Hospital, Japan
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 395-403
背景
バンコマイシン耐性腸球菌( vancomycin-resistant Enterococcus;VRE)のアウトブレイクは、病院における深刻な問題の 1 つである。伝播経路を推測することは適切な感染制御策を導入するための重要な因子であるが、その方法論は十分には確立されていない。
目的
VRE のアウトブレイク 1 件に関連する全ゲノムシークエンシング(WGS)データから抽出された配列変異体と患者の疫学情報を用いて、伝播モデルを再構築および評価すること。
方法
当院におけるVRE のアウトブレイク 1 件の発生中に、患者および環境表面から 23 のサンプルを採取し、WGS を用いて解析した。ゲノムアラインメントの情報と患者の疫学データを組み合わせることにより、ベイズアプローチを用いて VRE の伝播経路を再構築した。アウトブレイクに関与するリスク因子を特定するため、伝播モデルを用いて評価およびさらなる解析を実施した。
結果
すべての VRE は、vanA(N = 8、1 つの環境サンプルを含む)および vanB(N = 15)の 2 つの VRE 遺伝子型から成る配列型 17 に属するエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)として同定された。ベイズアプローチを用いた再構築モデルによって、事後確率とともに伝播方向が示され、環境表面を介した伝播が明らかになった。さらに、一部の症例が VRE のスプレッダーの役割をしていることが明らかになったが、これにより適切な感染制御が妨げられる可能性がある。バンコマイシン投与はスプレッダーの有意なリスク因子として特定された。
結論
疫学データと WGS によるゲノム変異体を用いた伝播経路の再構築を目的とするベイズアプローチは、実際の VRE のアウトブレイクに適用でき、効果的な感染制御策の設計と実施に寄与する可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
2018 年に防衛医科大学校病院にて発生した VRE 集団発生事例における菌株と疫学データの解析をおこなった論文である。ベイズアプローチによる伝播経路の解析により、スーパースプレッダーの存在が明らかになったことは、大変興味深い。

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