欧州連合/欧州経済地域における手術部位感染症の有病率と発生率:これらの指標はどのように関係するのか?
Prevalence and incidence of surgical site infections in the European Union/European Economic Area: how do these measures relate?
A.P. Meijs* , I. Prantner, T. Kärki, J.A. Ferreira, P. Kinross, E. Presterl, P. Märtin, O. Lyytikäinen, S. Hansen, A. Szőnyi, E. Ricchizzi, R. Valinteliėnė, S. Zerafa, S.C. de Greeff, T.C. Berg, P.A. Fernandes, M. Štefkovičová, A. Asensio, T. Lamagni, M. Sartaj, J. Reilly, W. Harrison, C. Suetens, M.B.G. Koek
* National Institute for Public Health and the Environment, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 404-411
背景
2011 年から 2012 年に欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、手術部位感染症(SSI)のような特定の種類の医療関連感染症(HCAI)の発生率の対象限定サーベイランスに加えて、欧州初の HCAI の点有病率調査(PPS)を開始した。
目的
ECDC の PPS データから、国および複数国の SSI の発生率を推定できるかどうかを検討すること。
方法
全体で、両方の ECDC のサーベイランスモジュールに参加した 15 か国の 病院 159 施設が含まれ、発生率サーベイランスにおける外科手術手技を、PPS の対応する専門領域に合わせて調整した。国の 1 日あたりの SSI の有病率は発生率サーベイランスのデータからシミュレートし、Rhame ˗ Sudderth の式を用いて PPS のデータから国および複数国の SSI の発生率を推定し、PPS のデータを含む線形モデルを用いて専門領域ごとの国の発生率を予測した。
結果
SSI の発生率サーベイランスに基づく 1 日あたりの SSI の有病率のシミュレーションによると、測定日に応じて有病率がランダムに変動することが示された。Rhame – Sudderth の式で推定された国の総発生率と観察された SSI の発生率の間の相関性は低かったが(相関係数は 0.24)、専門領域別の発生率の結果は、とりわけ対象患者数が多い場合により信頼性が高かった(相関係数の範囲は 0.40 ~ 1.00)。PPS データを含む線形予測モデルでは、説明分散の比率は低かった(0.40)。
結論
正確性が欠如しているため、SSI の発生率の推定を目的として PPS データを使用することは、SSI の発生率サーベイランスが実施されず、かつ十分に大きなサンプル数の PPS データが利用可能な状況でのみ推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
point prevalence survey(点有病率調査)は、通常のサーベイランスが継続したデータの収集であるのに対し、ある 1 時点でのデータを定期的に収集し解析する手法で、「スナップショット」とも呼ばれる。本論文は、SSI サーベイランスに対する PPS の有用性の評価を行ったものであり、サーベイランスの評価の重要性が再認識された。
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