複数の除菌プロトコール実施後の床および空気からのノロウイルス回収★
Norovirus recovery from floors and air after various decontamination protocols
C.L. Ciofi-Silva*, C.Q.M. Bruna, R.C.C. Carmona, A.G.C.S. Almeida, F.C.P. Santos, N.M. Inada, V.S. Bagnato, K.U. Graziano
*Universidade de São Paulo, Brazil
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 328-334
背景
ノロウイルスは少量で感染性を有するため、糞便や嘔吐物による汚染後の床からの空気中ノロウイルス粒子の拡散は、感染制御にとって課題である。したがって、床の除菌の安全なプロトコールを確立することは、極めて重要である。
目的
複数の床の除菌手順の実施後に、床の上に残存するノロウイルス GII 粒子および空気中粒子の存在について評価すること。
方法
2 種類の床(ビニールおよび花こう岩)を、ノロウイルス GII を含有する 10%ヒト糞便で意図的に汚染させた。2 種類の除菌プロトコールとして、洗浄後に 1%次亜塩素酸ナトリウムを用いる消毒、または洗浄後に手動の紫外線 C 波デバイスを用いる消毒を実施した。スワブサンプルを床から採取し、空気サンプルをエアサンプラーを用いて採取した。TaqMan 法による定量的逆転写リアルタイム PCR を用いて解析を行った。
結果
洗浄後に 1%次亜塩素酸ナトリウムを用いる消毒プロトコールは、洗浄後の紫外線 C 波曝露より効果が高いことが示された(P < 0.001)。洗浄後の空気サンプル 36 個中 27 個でウイルス粒子が検出され、2 種類の床の間で有意差はなかった。洗浄後の空気サンプルでは平均で 617 ゲノムコピー / サンプルが認められたが、消毒後にこの値は段階的に減少した。
結論
ノロウイルス GII は床の洗浄中にエアロゾル化する可能性があり、その粒子が吸入され、次いで嚥下されたり表面上に定着する可能性がある。したがって、床の上に残存するウイルス粒子は、十分に除去しなければならない。洗浄後の 1%次亜塩素酸ナトリウムによる 10 分間の消毒は、優れた除菌プロトコールであることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
これまで床に残ったノロウイルスにより空気感染することが疫学的に報告されていたが、本論文では床の清掃処理時にエアロゾル化して空気中を浮遊することがエアサンプリングと定量的 RT-PCR 検査により証明されており、またウイルス粒子数は平均で 500 コピーを超えており、十分に空気感染する可能性があり、処理時には N95 マスクが必要であると論じている。床の吐物は徹底的に清掃と次亜塩素酸による消毒が必要であることを改めて証明した。なお、本論文で使用されている次亜塩素酸の濃度は 1%で、通常日本の医療施設で使用される 0.1% 〜 0.5%よりも濃度が高い。一方で、クロストリジオイデス・デイフィシル感染症における UV-C による環境消毒効果が話題となっているが、本実験においては UV-C は、次亜塩素酸よりも効果的ではなかった。結論をだすには、今後さらなる検討が必要であろう。
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