病院での抗菌薬使用を安全かつ実質的に減らすための ARK(Antibiotic Review Kit)介入の適応と実施:実現可能性調査★
Adaptation and implementation of the ARK (Antibiotic Review Kit) intervention to safely and substantially reduce antibiotic use in hospitals: a feasibility study
E.L.A. Cross*, K. Sivyer, J. Islam, M. Santillo, F. Mowbray, T.E.A. Peto, A.S. Walker, L. Yardley, M.J. Llewelyn
*University of Sussex, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 268-275
背景
2 次医療における抗菌薬適正使用支援のイニシアチブは、抗菌薬処方の見直しを行う臨床医にかかっているが、見直しにおける抗菌薬治療を制限する意思決定は複雑である。
目的
ARK(Antibiotic Review Kit)は、入院患者において抗菌薬治療を中止することが安全である場合に、その中止を支援する行動変容介入ツールであり、4 つの要素(簡便なオンラインツール、処方決定ガイド、定期的なデータ収集とフィードバック処理、患者向け小冊子)で構成される。本研究の目的は、ステップウェッジ法によるクラスターランダム化比較対照試験による決定的な評価に先立ち、ARK 導入の可能性および受容性を評価することである。
方法
オンラインツールの取り込み、処方業務への意思決定ガイドの導入、見直し(反復点有病率調査による評価)による抗菌薬中止の決定率により、異なる介入要素の受容性を 12 週間にわたり評価した。情報小冊子に対する患者の認識を簡易質問票により評価した。
結果
介入の全要素の実践を導入することに成功した。さまざまな処方者および非処方者を含む職員 132 名がオンラインツールを使いこなし(急性期病床 100 床あたり 19.4 名)、その中には事前に特定した重要な役割を担う臨床スタッフの 97%(33 名中 32 名)が含まれる。12 週間の実施期間に 7 回の点有病率調査で評価した処方記録 588 件のうち、全体として 82%(各調査において 76% ~ 90%)で意思決定ガイドが使用された。抗菌薬中止率の中央値は、導入前が 9%であったのに対して、導入後は 36%(各調査において 29% ~ 40%)であった(P < 0.001)。
結論
急性期病院環境での処方後の見直しにおいて、ARK は 抗菌薬の安全な中止を支援するのに利用可能かつ受容可能な機能を提供する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
急性期病院における ARK(Antibiotic Review Kit)と名付けられた 4 つの要素(簡便なオンラインツール、処方決定ガイド、定期的なデータ収集とフィードバック処理、患者向け小冊子)で構成された抗菌薬の中止を支援する行動変容介入ツールの実現可能性を調査した論文である。1 施設での取り組みであるが、AMR 対策バンドルの構築と評価は大変興味深い。
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