ノルウェーの医療機関で2005 年から 2018 年に発生したノロウイルスアウトブレイクの疫学と影響★

2019.11.05

Epidemiology and impact of norovirus outbreaks in Norwegian healthcare institutions, 2005-2018


L. Espenhain*, T.C. Berg, H. Bente, K. Nygård, O. Kacelnik
*Norwegian Institute of Public Health, Norway
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 335-340
目的
本研究の目的は、ノルウェーの医療機関におけるノロウイルスアウトブレイクの疫学と影響について初めて詳細に記述すること、およびアウトブレイクへの対応を改善し得る地域を明らかにすることであった。
方法
2005 年第 34 週から2018 年第 33 週に、病院および長期療養施設(LTCF)から報告されたすべてのノロウイルスアウトブレイクについて分析を行った。季節性、症状、ならびにスタッフおよび患者の例数を記録した。
結果
965 件(LTCF 740 件、病院 225 件)のアウトブレイクが報告され、罹患者は合計 20,544 例(うち医療スタッフは7,044 例)であった。1アウトブレイク当たりの症例数の中央値は、LTCF は 15 例[四分位範囲(IQR)8 ~ 25 例]、病院は 17 例[IQR 10 ~ 28 例]であった。すべての地域でアウトブレイクが発生していたが、研究期間中、 3 分の 1 の地方自治体において LTCFから少なくとも 1 件のアウトブレイクが報告された。アウトブレイクの始まりの時期は、病院の方が LTCF より約 4 週間早かった。医療スタッフの年間労働損失日数の推定平均は、1,590 日から 1,944 日の範囲であった。
結論
ノルウェーの医療機関におけるノロウイルスアウトブレイクは、ノルウェー全国で病院とLTCF の両方に大きな影響を及ぼしているようであり、とくに冬季は影響が大きかった。罹患の半数までが医療従事者であったという事実は、感染制御にさらなる焦点を当てる必要があることを強調するものであろう。加えて今回の結果は、病院で先にアウトブレイクが発生した場合に、その地域の LTCF に対して警告を発することによって、さらなるアウトブレイクの発生が防ぎ得ることを示唆している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
人口 530 万人のノルウェーには、60 カ所の病院と 950 カ所の LTCF が存在する。今回の検討は、ノルウェー全体でのノロウイルス感染症サーベイランスの結果であるが、国家規模、医療機関・LTCF・人口の密度、地理的特徴を考慮しつつ解釈すると、非常に興味深い。全数報告制度および医療機関から LTCF へのアラート制度についても述べられており、この点も参考になろう。

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