集中治療室におけるカルバペネム耐性グラム陰性菌獲得の予測
Predicting acquisition of carbapenem-resistant Gram-negative pathogens in intensive care units
L.F. Dantas*, B. Dalmas, R.M. Andrade, S. Hamacher, F.A. Bozza
*Pontifical Catholic University of Rio de Janeiro, Brazil
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 121-127
背景
多剤耐性グラム陰性菌による感染症は、現代における健康上の深刻な問題の一つで、特に集中治療室(ICU)において顕著であり、入院期間・感染率・費用・死亡率の増加と関連する可能性がある。
目的
本研究の目的は、ICUにおけるカルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌獲得を予測すること、このリスク因子を決定すること、この獲得が死亡率に及ぼす影響を評価することである。
方法
ブラジルの大規模な病院 1 施設の ICU に入院した患者を対象に、マッチさせた症例対照研究を 5 年間にわたり実施した。症例は、入院中にカルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌を獲得した患者と定義した。対照は、カルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌が検出されなかった患者と定義した。入院期間によって症例と対照をマッチさせた。ステップワイズ変数選択法を用いた多重ロジスティック回帰分析により、リスク因子を特定した。
結果
全体で症例 343 例、対照 1,029 例について分析した。カルバペネム耐性を含む多剤耐性グラム陰性菌を ICU で獲得した患者の 30 日死亡率は 37.6%であった。多剤耐性菌株獲得において統計的に有意で、より関連のある 5 つの変数が特定された。すなわち、Simplified Acute Physiology Score 3 のスコア増加、重度の慢性閉塞性肺疾患を有する患者、血液透析カテーテル留置、中心静脈カテーテル留置、人工呼吸器装着であった。開発したモデルにより、正確度が約 90%という良好な成績が示された。多剤耐性グラム陰性菌の獲得患者の死亡率は、多剤耐性グラム陰性菌の非獲得患者よりも 2.72 倍高かった。
結論
リスク因子の特定および予測モデルの開発は、早期発見と多剤耐性菌拡散の制御によって患者に有益となる可能性がある。確認された主要なリスク因子は、人工呼吸器装着と中心静脈カテーテルであり、これらの使用には特別な注意が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
Simplified Acute Physiology Score 3 のスコア増加、重度の慢性閉塞性肺疾患を有する患者、血液透析カテーテル留置、中心静脈カテーテル留置、人工呼吸器装着というリスク因子があることが判明したことにより、感染予防策の強化を行うことで感染のリスクが軽減できるのかどうかが次のチャレンジになるだろう。
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