東ロンドンにおけるカルバペネマーゼ産生菌の地域有病率

2019.10.15

Community prevalence of carbapenemase-producing organisms in East London


J. Henderson*, H. Ciesielczuk, S.M. Nelson, M. Wilks
*Royal London Hospital, Barts and the London NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 142-146
背景
この 10 年間、カルバペネム耐性が急速に世界的に増加しており、懸念が高まりつつある。主役はカルバペネマーゼであり、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae )カルバペネマーゼ(KPC)、オキサシリナーゼβ–ラクタマーゼ 48(OXA-48)、イミペネマーゼメタロβ–ラクタマーゼ(IMP)、ヴェローナ・インテグロン由来メタロβ–ラクタマーゼ(VIM)、ニューデリー・メタロβ–ラクタマーゼ(NDM)が英国全域でも報告されてきている。しかし、これらの報告は、反応性スクリーニング、アウトブレイク制御、入院患者調査、診断用検体の組み合わせから得られたものである。したがって、真の地域有病率は不明である。
目的
バーツ・ヘルス NHS トラストが医療提供している地域におけるカルバペネマーゼ産生菌の地域有病率を明らかにすること。
方法
重複のない、地域の糞便試料 200 件の積極的スクリーニングを実施した。カルバペネマーゼ産生菌の保菌に関する潜在的なリスク因子を特定するため、検査室情報管理システムから患者の人口統計学的特性および海外旅行歴を抽出した。
結果
本研究の患者の年齢は 1 歳から 93 歳であり、男女均等に割り付けた。過去 1 年間の海外旅行は患者 200 例のうち 46 例(23%)に記載があり、最もよく訪問された国はバングラデシュ(4%)、インド(2.5%)、モロッコ(2%)、トルコ(1.5%)であった。しかし、患者 1 例のみがカルバペネマーゼ産生菌である NDM 産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)検査陽性となり、この患者はカリブ海へ旅行していた。
結論
英国の地域社会においてカルバペネマーゼ産生菌の有病率を調査した研究はこれまでにない。バーツ・ヘルス NHS トラストが医療提供している高リスクの患者集団を考慮すると、本研究において認められた有病率が低かったことは心強い。しかし、以前は高リスクとして分類されていなかった国々へ旅行することも、脅威をもたらす可能性があることは強調すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
東ロンドンのあるエリアでのカルバペネマーゼ産生菌の保有率を調査した論文である。結果は、何らかの消化器症状が有り受診した 200 例のうち、1 例のみ、NDM 産生緑膿菌を保有していた。しかし、対象者の 23%にあたる 46 例が 1 年以内の渡航歴があった。それ以外にも感受性低下が確認されており、その中には渡航歴がない人も多かった。渡航歴の確認は必須であるが、地域での健常人での耐性菌の保有率も考慮に入れる必要があると思われた。

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