カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌およびバンコマイシン耐性腸球菌の保菌者が偶発的に発見された場合、リアルタイム PCR が病院の業務の復旧を早めるか?
Can real-time polymerase chain reaction allow a faster recovery of hospital activity in cases of an incidental discovery of carbapenemase-producing Enterobacteriaceae and vancomycin-resistant Enterococci carriers?
R. Saliba*, C. Neulier, D. Seytre, A. Fiacre, F. Faibis, P. Leduc, M. Amara, F. Jauréguy, E. arbonnelle, J.-R. Zahar*, L. Marty
*IAME, UMR 1137, Université Paris 13, France
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 115-120
背景
糞便中のカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の保菌者の発見は、多くの国においてルーチンの診療業務となっている。アウトブレイク時に、接触患者における獲得を阻止するために、複数の公衆衛生機関が 1 週間毎に 3 回の直腸スクリーニングを推奨している。この対策は、比較的長期にわたる病床閉鎖や診療業務の減少と関連しており、費用がかかるようである。
目的
本研究の目的は、接触患者において CPE/VRE 獲得患者を特定するために、0 日目に実施する逆転写 PCR(RT-PCR、GeneXpert®)の陽性/陰性適中率を、従来の 1 週間毎に 3 回の培養による直腸スクリーニングの結果と比較して検証することである。
方法
2015 年 1 月から 2018 年 10 月に、多施設共同後向き研究を実施した。偶発的に発見された CPE/VRE の保菌または感染を有する発端患者から特定した接触患者すべてを含めた。各接触患者において、 0 日目の PCR(GeneXpert®)および推奨されている 1 週間毎に 3 回のスクリーニングにより検査を実施した。
結果
発端患者 22 例、接触患者 159 例を対象とした。1 患者あたりの 2 次症例数は平均 0.77、接触期間の平均は 10 日(1 日~ 64 日)であった。接触患者 159 例中 16 例(10%)が、観察期間に CPE/VRE 培養陽性となった。直腸スクリーニング陽性は、0 日目が 10 例、7 日目が 2 例、14 日目が 4 例であった。培養陽性の患者 16 例中 13 例が、0 日目の PCR で陽性であった。全体的に、1 週間毎に 3 回のスクリーニングと 0 日目の PCR の結果の一致度は 97.5%(159 例中 155例)であった。発端患者の発見 0 日目に接触患者において PCR(GeneXpert®)を実施したところ、1 週間毎に 3 回のスクリーニングと比較して、所要時間を 5 日~ 27 日に短縮できた。陽性適中率は 100%、陰性適中率は 98%であった。
結論
RT-PCR(GeneXpert®)の使用により、CPE/VRE獲得を阻止するために必要な 1 週間毎に 3 回の直腸検体採取を避けることができる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
陽性適中率は 100%、陰性適中率は 98%も問題ないので,スクリーニング検査としての価値は高い。一方で、菌株を必要とする場合には古典的な選択培地を用いての監視培養検査が必要である。
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