神経障害リハビリテーション科におけるモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)の院内アウトブレイクの分子疫学的研究★
Molecular epidemiology study of a nosocomial Moraxella catarrhalis outbreak in a neurological rehabilitation unit
P. Warnke*, T. Köller, B. Kreikemeyer, I. Barrantes, H. Mach, A. Podbielski
*University Medicine Rostock, Germany
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 27-34
背景
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)は、特に人工呼吸器装着患者の上下気道感染症を引き起こす一般的な病原体で、直接的または間接的な接触によりヒト‐ヒト間で伝播する。しかし、この病原体による院内アウトブレイクの報告は少ない。
目的
医学的リハビリテーション施設におけるアウトブレイク期間に分離された M.catarrhalis 菌株のクローン関連性を明らかにするとともに、可能性のある伝播経路を解明するために、この菌株を分析すること。
方法
広範囲に及ぶ環境および医療従事者からのサンプリングを実施した。分離株 15 株の表現型および遺伝子型分析を、repetitive element palindromic(rep)‐ PCR法、全ゲノムシークエンシングを用いて実施した。さらに衛生対策の強化を組み入れた。
結果
患者の分離株 9 株、および職員のスクリーニング期間に 1 名の医師から分離された菌株を含む同時存在の別の分離株のクローン性を確認した。職員の無症状保菌者とアウトブレイク株の汚染媒介物のいずれについても、特別な介入が確認されなかったが、衛生面での一般的および特異的な最大限の予防策によりアウトブレイクは終息した。後向き分析では、アウトブレイク発生前 2 年間にわたり、M. catarrhalis 菌株の発現率の増加傾向が示された。それ以降および通常の衛生対策に戻ってからは、表現型の異なる M. catarrhalis 分離株を有する患者が 1 例確認されるにとどまった。
結論
神経障害リハビリテーション施設の患者 9 例を巻き込んだ初回の M. catarrhalis アウトブレイクについて報告した。可能性のある伝播経路を考察した。アウトブレイクの包括的分析から、確定菌種のルーチンでの検査室保存期間の延長が示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
従来の解析手法と全ゲノムシークエンシングを組み合わせたアウトブレイクへのアプローチである。エビデンスに基づく対策の徹底によりアウトブレイクの早期解決の糸口がつかめる。
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