病院において一方向流型置換気流システムのシステム性能に有意な影響を及ぼすデザイン上の変数★
Design variables with significant effect on system performance of unidirectional displacement airflow systems in hospitals
A.A.L. Traversari*, S.P.M. van Heumen, F.L.J. van Tiem, C. Bottenheft, M.J. Hinkema
*The Netherlands Organisation for Applied Scientific Research TNO, the Netherlands
Journal of Hospital Infection (2019) 103, e81-e87
背景
手術室および器械保管室の周辺から発生する、微生物を含有する粒子の取り込みの予防における気流換気システムの有効性は、多くの変数の影響を受ける。換気システムのデザインの違いが、有効保護率、すなわち備品用キャノピーの表面積に対する保護区域の面積の比に影響を及ぼす可能性が考えられる。しかし、この比に対して優位な影響を及ぼすデザイン変数が何であるのかについての分析はこれまで行われていない。
目的
手術室および器械保管室においてどのデザイン変数が気流換気システムの性能(有効保護率)に有意な影響を及ぼすかを評価すること。
方法
オランダ国内のすべての総合病院および教育病院(N = 77)に対し、手術室および器械保管室について、各病院の標準化された(システム停止時測定法)義務的システム評価報告のデータを提出するよう依頼した。病院施設計 22 カ所を含む19 病院(25%)から、十分な完全かつ均一な情報が提供され、結果として手術室 101 室および器械保管室 23 室について測定データが得られた。このデータセットを、Statistical Package for Social Sciences(SPSS)統計解析ソフトを用いて解析した。
結果
手術室については、有効保護率の重要な予測因子は、キャノピーの形状、備品用キャノピー下の空気流速、キャノピースクリーンの高さ、システムのタイプ、およびキャノピーの大きさであった。これらの有意な予測因子(P< 0.05)により、本データセットにおける結果の 48%が説明された。器械保管室については、有効保護率の有意な予測因子は、排気エアターミナルの位置、キャノピースクリーンの高さ、およびキャノピーの大きさであった。これらの有意な予測因子により、本データセットにおける結果の 66%が説明された。
結論
解析対象として得られたデータセットに基づいた結論として、備品用キャノピーの表面積に対する保護区域の面積の比(有効保護率)は、キャノピーを囲むスクリーンの存在および高さ、備品用キャノピーの表面積、およびキャノピー下の供給空気の流速に関連して改善する。この情報は、一方向流型置換気流システムの今後のデザインにとって指針として用いることができる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
周術期感染症において手術室の気流の重要性は、1960 年代に一方向流型換気システム(UDF)の導入により人工大腿骨頭置換術後の感染症を減らすことに成功したことにはじまる。2014 年オランダでは UDF システムのガイドラインがだされ、2017 年以後定期的に気流の環境状況を把握することが要求されている。本論文では予め決められた測定箇所にさらに追加して測定することで、より実際の気流状況を把握することができ、キャノピーが大きければ有効保護率も改善することが判明している。また、給気キャノピーの大きさ、風速、給気側と下流域の温度差、排気装置の位置、無影灯の種類、キャノピー周囲にある部分的スクリーンなどは、有効保護率に影響を及ぼすため、一方向流型置換気流システムのキャノピーおよびそれに関係する設備のデザインは重要である。手術室の換気システムについて詳細を知りたい場合は、以下の URL に本論文の著者が詳細に解説している。https://cris.maastrichtuniversity.nl/portal/files/31377961/c6260.pdf
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