偽陽性の血液培養を標的とした病院内の介入が経済的結果と臨床転帰に与える影響を評価するモデル★

2019.08.30

Model to evaluate the impact of hospital-based interventions targeting false-positive blood cultures on economic and clinical outcomes


B.P. Geisler*, N. Jilg, R.G. Patton, J.B. Pietzsch
*Wing Tech Inc., Menlo Park, USA
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 438-444
背景
血液培養汚染は入院期間(LOS)を延長させ、不必要な抗菌薬療法や入院後合併症を引き起こす。
目的
追加の LOS の程度、病院と社会に与える損失、ならびに血液培養汚染に起因する患者への悪影響を数値化すること。
方法
敗血症と適合する症状のある入院患者を含めて、後向きマッチング生存分析を実施した。主要な LOSのデータ、修正デルファイ・プロセス、公表された情報源に基づき、血液培養汚染の費用、入院後合併症、潜在的な費用削減額を算出した。費用分析によって標準的治療と血液培養汚染を減少させるための介入を比較し、典型的な病院および米国全体にもたらす年間の経済的・臨床的結果を推定した。
結果
血液培養汚染がみられた患者では、LOS は平均で 2.35 日延長した(P = 0.0076)。血液培養汚染を回避することで、費用が 6,463 ドル削減される可能性があった(4,818 ドルは入院患者のケアに由来し[このうち 53%は LOS の短縮による]、26%は抗菌薬使用の減少に由来する)。250 ~ 400 床の典型的な病院において、採血専門技師を雇用することによって、年間で 130 万ドル削減され 24 例の入院後合併症(クロストリジウム・ディフィシル[Clostridium difficile]感染症 2 症例を含む)を防ぐ可能性があった。また、臨床効果のエビデンスに基づくと、研究された「採血時初期血液分離装置」を使用すると、年間で 190 万ドルを削減し 34 例の入院後合併症(C. difficile 感染症 3 症例を含む)を防ぐ可能性があった。米国全体では、それぞれの方法により 69,300 例および 102,900 例の入院後合併症(C. difficile 感染症 6,000 症例および 8,900 症例を含む)を防ぎ、50 億ドルおよび 75 億ドル削減される可能性があった。
結論
偽陽性の血液培養に関連する費用および臨床的負担は極めて大きいが、採血専門技師とこの血液分離装置の使用を含めた介入を利用することにより、これらを削減できる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
血液培養「偽」陽性は、一般的に頻度は 0.6% 〜 6%とされ、不要な抗菌薬投与や余分な検査による入院期間の延長が発生し、経済的損失を増やすこととなる。これまでに偽陽性を減らすために、適切な皮膚消毒、滅菌済みの血液採取キット、血液培養専門の採血チームによる試みがなされてきた。さらに偽陽性を減らすために導入されたのが「採血時初期血分離装置」である。この装置を使用して血液培養を実施することで、コストダウンと入院期間短縮が図れる。
監訳注:「採血時初期血液分離装置」(initial specimen diversion device)は、血液培養のための血液採取時に混入する皮膚常在菌で汚染された初期の1 〜 2 mLの血液を、この装置内で分離した後、以後の汚染のない血液を血液培養ボトルに分注できるようにした装置である。

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