細菌保菌および原発性敗血症の前向きサーベイランス:3 次新生児集中治療室および中間ケア病棟における結果★★
Prospective surveillance of bacterial colonization and primary sepsis: findings of a tertiary neonatal intensive and intermediate care unit
C. Baier*, S. Pirr, S. Ziesing, E. Ebadi, G. Hansen, B. Bohnhorst, F.-C. Bange
*Hannover Medical School, Germany
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 325-331
背景
早産乳児および重症新生児は、院内感染症として敗血症を発症しやすい。さらに、これらの乳児は、将来害をもたらす可能性のある細菌を常在細菌として獲得する。これらの細菌の病棟内伝播が、アウトブレイクを引き起こすことがある。
目的
早産乳児および新生児を対象とした細菌保菌および原発性敗血症の前向きサーベイランスの結果を報告すること。
方法
2016 年 11 月から 2018 年 3 月にわたり、腸管および気道における細菌保菌のサーベイランスを、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)およびグラム陰性細菌を対象に行った結果を分析した。細菌保菌と敗血症サーベイランスの比較を行った。
結果
患児 671 例が入院し、患児の 87.0 %(N = 584)にスクリーニングを行った。スクリーニングを行った患児の 48.3%(N = 282)に、スクリーニングの対象とした細菌の少なくとも 1 種の保菌が認められ、そのうち 26.2%(N = 74)が多剤耐性株であった。細菌分離株計 534 株が回収された。高頻度に認められた細菌種は大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)であった。MRSA 3株が検出されたが、VRE は検出されなかった。サーベイランスにより、患児 9 例に肺炎桿菌のクラスターが検出された。血液培養で確認された敗血症エピソードは 23 件あり、60.9%(N = 14)はブドウ球菌によるものであった。グラム陰性菌(1 件はクレブシエラ・アエロゲネス[Klebsiella aerogenes]、2 件は E. cloacae)は、敗血症エピソード 3 件の原因であったが、すでにそれぞれの株について保菌状態が先行していた。
結論
保菌のサーベイランスにより、細菌種および抗菌薬耐性のパターンについて包括的な概観が得られる。これにより、保菌クラスターの早期発見が可能になる。保菌状況の把握と敗血症のサーベイランスは、感染制御策および抗菌薬療法の指針として有用である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ドイツでは、NICU での敗血症、肺炎、壊死性腸炎の前向きのサーベイランスは必須であり、さらにグラム陰性菌と特定のグラム陽性菌(MRSA および VRE)の保菌スクリーニング(咽頭および便検体)は1,500 グラム以下の超低出産体重児に対して実施することが推奨されている。保菌スクリーニングの定期的実施は、感染制御策の破綻を早期に発見することができ有用であるとともに、予め耐性菌の感受性がわかることで敗血症における経験的な抗菌薬選択の一助となる可能性がある。日本においてはすでに NICU において MRSA やカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)耐性菌によるアウトブレイクが報告されており、グラム陽性菌では MRSA および VRE、グラム陰性菌では ESBL 産生菌と CRE によるアウトブレイクの発生が将来的に懸念されるため、保菌スクリーニングの対象や適応についても今後検討すべき課題である。
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