掘り起こした遺体における C 型肝炎ウイルスの検出により複数の致死的疾患を引き起こした院内伝播源が特定された★★

2019.07.02

Detection of hepatitis C virus in an exhumed body identified the origin of a nosocomial transmission that caused multiple fatal diseases


J. McDermott*, S.G. Parisi, I. Martini, C. Boldrin, E. Franchin, F. Dal Bello, A. Gianelli Castiglione, E. Boeri, M. Sampaolo, M. Basso, P. Menegazzi, L. Tagliaferro, G. Palù, O.E. Varnier
*University of Genoa, Italy
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 332-336
背景
医療と法律における利害の対立は、院内感染症の原因を証明することが難しい場合に発生する。
目的
中心静脈カテーテルのフラッシュ時に反復投与用の生理食塩水バッグの反復使用を介した C 型肝炎ウイルス(HCV)の患者間伝播のアウトブレイクについて報告すること。
方法
各患者から血液サンプルを採取して、HCV RNA 株の比較分析を行った。調査開始前に死亡した患者 1 例では、サンプルが得られなかった。HCV RNAは不安定であることが知られているが、埋葬の 4 か月後にその遺体を掘り起こして剖検サンプルを採取した。肝臓および脾臓のサンプルからHCV RNAを抽出できた。すべての HCV 株について、5’NC 非翻訳領域、E1 コア保存領域、および E1/E2 超可変領域の配列解析により遺伝子型決定を実施した。
結果
法医学研究者らが、2 名の病棟看護師が実施した使用ルートについて追跡した。、患者 14 例に対して各看護師が患者 7 例ずつ生理食塩水によるカテーテルのフラッシュを行っており、その経路をさかのぼって調査した。系統樹解析によりすべての症例の分離株を比較したところ、死亡患者が患者 5 例の汚染源であったと同定された。
結論
本研究では、医療と法律における利害の対立を解決するためのツールとしての配列解析の重要性が強調されている。高等法院は、医療従事者による汚染されたニードルの再使用が HCV の院内伝播を引き起こしたと判断した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
8 例の入院患者がこのアウトブレイクで HCV(ジェノタイプ 2a)に罹患し、2 例が慢性肝炎、6 例が急性肝炎を呈した。うち2 例の急性白血病患者では HCV 抗体陰性(HCV-RNA陽性)であった。原因追求のために埋葬された死体臓器から遺伝子を抽出後遺伝子解析を実施し、このアウトブレイクの感染源が明らかとなった。これら患者のうち 6 例が同時期に中心静脈ラインが挿入されており、共通手技はカテーテルからの採血後の生食フラッシュであった。さらに看護師へのインタビュー、バーコードによる認証記録などの詳細な検索により 2005 年 12 月 14 日の朝 7 時から 7 時 30 分までの間に発生していることが判明した。その時間帯に勤務していた看護師 2 名が 7 例ずつの患者、計 14 例の患者からカテーテル採血をおこない、同一の 250 mL生食バッグから生食フラッシュを実施しており、フラッシュ用生食に使用する注射針の使い回しが原因であった。1 例の HCV 患者にこの操作をおこなった後、同じ注射針で 5 例の患者に使用したため感染が起こった。HCVの院内感染は日本でも報告されており(肝臓 51:273-276,2010)、再度日常の感染対策の見直しが必要である。

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