知識を実践に応用する:バングラデシュにおける看護師の感染制御能力を高めるための多面的多施設介入

2019.06.18

Transferring knowledge into practice: a multi-modal, multi-centre intervention for enhancing nurses’ infection control competency in Bangladesh


L. Ara, F. Bashar*, M.E.H. Tamal, N.K.A. Siddiquee, S.M.N. Mowla, S.A. Sarker
*Nutrition and Clinical Services Division, icddr,b, Mohakhali, Bangladesh
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 234-240
背景
看護師は、治療だけでなく患者のケアにおいても重要な役割を担っていることから、感染予防にとって鍵となると考えられる。
目的
バングラデシュにおいて、標準的な感染制御の実践における看護師の能力(コンピテンシー)と遵守を改善することを目指し、多面的な介入が果たす役割を評価することを目的とした。
方法
本研究は介入前後比較のアプローチを採用し、バングラデシュの病院 5 施設(2 施設は公立、2 施設は私立、1 施設は自治)において、3 つの期間(2012 年 から 2017 年)に実施した。各研究期間を 3 つのフェーズ、すなわち介入前、多面的介入、および介入後に分けた。統一したチェックリストによる直接観察法を用いて、看護師 642 名についてデータを収集した。
結果
多面的介入の実施後、手指衛生の全遵守率は、患者との接触前(1.3%から 50.2%、P < 0.000)および患者との接触後(2.8%から 59.6%、P < 0.000)の両方で有意に上昇した。顕著な改善が、手袋の使用(14.6%から 57.6%、P < 0.000)、無菌操作時における器具の無菌性の維持(34.9%から 86%、P < 0.000)、生物医学的廃棄物の分別(1.8%から 81.3%、P < 0.000)ならびに処置部位へのラベル付け(0%から 85.7%、P < 0.000)の遵守率でも達成された。さらに、針刺し切創の発生率が顕著に低下した(6.2%から 0.6%、P < 0.000)。
結論
看護師が標準的な感染制御を実践する際の遵守率を向上させる上で、多面的介入は非常に重要な役割を果たしうる。このような行動や作業内容に合わせた介入は、医療関連感染症の予防ならびに職業上の危険の低減にとって極めて重要であるが、2030 年までのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて、低資源国において繰り返し行われるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本邦においてはいわば「あたりまえ」になっている感染対策上の基本的な手技が、他国では大きく事情が異なっていることに改めて驚かされる。看護師への多面的な介入が及ぼした効果の大きさからも、質的向上に重要なファクターについて考えさせられる論文である。質的なレベルを維持するための方策と介入について、今後の続報が待たれる。

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