無症状の毒素産生性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌者における全ゲノムシークエンシング:伝播に影響を及ぼす可能性に関する洞察
Whole genome sequencing of toxigenic Clostridium difficile in asymptomatic carriers: insights into possible role in transmission
F.D. Halstead*, A. Ravi, N. Thomson, M. Nuur, K. Hughes, M. Brailey, B.A. Oppenheim
*University Hospitals Birmingham NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 125-134
背景
長期ケア施設の高齢患者における無症状のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌の有病率は、推定で 0%~ 51%である。無症状の保菌は感染症発症のリスク因子である可能性が示され、無症状の保菌が伝播に及ぼす影響に関して議論が続いている。
目的
中間ケア(介護)施設に入所している患者において無症状の保菌の有病率を調査することと、無症状の C. difficile 株保菌が、院内 C. difficile 感染症(CDI)の一因となるかどうかを検討すること。
方法
中間ケア(介護)施設の無症状の適格患者から便を採取し、中間ケア(介護)施設以外で 1 次ケアまたは 2 次ケアを受けている有症状患者の検体も採取した。C. difficile 検出のために全検体を培養し、生じたコロニーを全ゲノムシークエンシングにより分析した。
結果
全体で、無症状の患者 151 例の便検体を採取し、培養によって、そのうち 22 例が C. difficile 陽性で、保菌率は 14.6%であった。これらの分離株のシークエンシング、ならびに有症状の患者の ポリメラーゼ連鎖反応および培養による C. difficile 陽性分離株 14 株によって、無症状の患者全員が、毒素産生性 C. difficile を保菌しており、これらの株は有症状の患者の分離株と遺伝学的に同一であることが示された。
結論
無症状の保菌に関する今回の小規模な研究により、中間ケア(介護)施設でケアを受ける患者において、無症状の直腸内保菌率が 14.6%であること、そして、これらの分離株は有症状患者から採取した分離株と遺伝学的な同一性が高いことが示された。したがって、無症状の保菌は有症状の CDI の伝播において重要かもしれない。ただし、本研究は小規模であり、また、C. difficile の無症状の保菌あるいは症状の誘発には、他の多くの因子が影響することは確認されている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
C. difficile、15%という保菌率はこれまでに指摘されている。
C. difficile は原始的な菌で有り多型性に乏しい傾向があるので、具体的な分析結果の評価に関しては慎重であるべきだろう。
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