ナーシングホーム入居者における尿道カテーテル留置と恥骨上カテーテル留置の比較:長期使用における最も安全な選択肢を明らかにする★
Indwelling urethral versus suprapubic catheters in nursing home residents: determining the safest option for long-term use
K.E. Gibson*, S. Neill, E. Tuma, J. Meddings, L. Mody
*University of Michigan Medical School, USA
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 219-225
背景
感染性合併症の発生率について、長期ケア環境で用いられる 2 種類の一般的な尿路カテーテル、すなわち尿道留置カテーテルおよび恥骨上留置カテーテルの間でこれまで比較が行われたことはなかった。
目的
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)の発生率および多剤耐性病原体(MDRO)保菌について、ナーシングホーム入居者を対象に尿道留置カテーテル留置および恥骨上留置カテーテルの間で比較を行うこと。
方法
参加者として、2010 年から 2013 年に実施された発表済みの、対象を絞った前向き感染症予防研究に登録された、カテーテルを留置されていたナーシングホーム入居者 418 例を組み入れた。入居者の年齢、性別、機能状態、併存疾患、ならびに感染症/抗菌薬使用および最近の入院に関する情報を、研究登録時、14 日目、およびその後最長 1 年間は 30 日ごとに入手した。各来院時に、微生物学的検査のためのサンプルを複数の解剖学的部位から採取した。Cox比例ハザードモデルにより、施設レベルのクラスタリングおよびその他の共変数を補正した。
結果
全体で、研究参加者 208 例が尿路カテーテルを留置されており、21,700 デバイス日に相当し、173 例(83%)が尿道カテーテル、35 例(17%)が恥骨上カテーテルであった。共変数の補正後、恥骨上カテーテル群のほうが CAUTI の発生率が低く(1,000 デバイス日あたり 6.6 対 8.8、P = 0.05)、入院した割合が半分で(ハザード比[HR]0.46、P < 0.01)、過去30日間に抗菌薬療法を受けた割合が 23%低かった(HR 0.77、P = 0.02)。カテーテル留置日数が 90 日以上の入居者では、分離された MDRO の平均数は恥骨上カテーテル群のほうが尿道カテーテル群より有意に多かった(0.57 対 0.44、P = 0.01)。シプロフロキサシン耐性グラム陰性桿菌の検出率は、両群ともに高かった。
結論
恥骨上カテーテルを留置されている入居者は CAUTI の発症が少なく、入院および抗菌薬使用が少ない可能性があるが、MDRO 保菌の割合が高い。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
米国では 160 万人のナーシングホームの入居者の約5 ~ 8%が、尿路カテーテルを留置しており、カテーテル留置により入居者の管理はしやすくなるが、一方で尿路感染症の増加とともに死亡率も増える。一般的にカテーテル留置後 1 週間以内に細菌が定着し、細菌によるバイオフォルムが形成され、後のカテーテル関連尿路感染症の原因となると同時に耐性菌の定着も増えることがわかっている。これまでの研究は急性期病院で実施されたものであり、本論文のようにナーシングホーム入居者における長期使用での知見は十分ではない。恥骨上留置カテーテルは、尿道留置カテーテルに較べ、尿路感染症と入院、抗菌薬使用が優位に減少することが明らかとなった。恥骨上留置カテーテルは日本においては長期留置することがまれではあるが、MDRO 定着との関連においては今後留意する必要があるだろう。
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