クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)伝播の数理モデルにおける季節性および地域介入

2019.06.18

Seasonality and community interventions in a mathematical model of Clostridium difficile transmission


A. McLure*, L. Furuya-Kanamori, A.C.A. Clements, M. Kirk, K. Glass
*Australian National University, Australia
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 157-164
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)は、晩冬または初秋に発生率がピークとなる抗菌薬関連下痢症の主要な原因である。CDI は病院に関連していることが多いが、市中伝播は重要である。
目的
CDI の季節性の潜在的な推進因子、ならびに伝播の減少を目的とする地域密着型の介入の効果を調査すること。
方法
病院 1 施設および周辺地域における C. difficile 伝播の機構的コンパートメントモデルを用いて、これらの環境における伝播減少効果または抗菌薬処方の低下効果を明らかにした。季節的な抗菌薬処方および季節的な伝播を考慮に入れるため、本モデルを拡張した。
結果
抗菌薬の季節性のモデリングは、およその大きさ(年平均を 13.9 ~ 15.1%上回る)およびピークの時期(抗菌薬のピークの 0.7 ~ 1.0 か月後)を含む、CDI の季節性を再現した。季節的な過剰な処方を半減させると、CDI の発生率は 6 ~ 18%低下した。地域の保菌率において、季節的な伝播は、季節的な抗菌薬の処方によるピーク(平均を 0.2 ~ 1.7%上回る)と比較して、より大きな季節的ピーク(平均を 14.8 ~ 22.1%上回る)をもたらした。症候性患者または入院患者からの伝播を減少させることは市中獲得型の CDI にほとんど影響を及ぼさないが、地域における伝播を 7%以上減少させるか乳児からの伝播を 30%以上減少させることにより、病原体が除去された。抗菌薬の処方率を低下させることにより、ほぼ比例的な感染症の減少につながったが、保菌率の低下は限定的であった。
結論
抗菌薬の処方率における季節変動は、観察された C. difficile の季節性の大きさおよび時期の要因となる可能性がある。入院患者または症候性患者からの伝播を完全に予防しても病原体は除去できないが、地域住民または乳児からの伝播を減少させる介入により、病院感染と市中感染の両方に大きな影響を及ぼす可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CDI の季節性変動の因子、病院感染の市中感染による影響を調べた論文である。この研究で、筆者らは抗菌薬の適正使用は CDI 感染症の減少に寄与すると思われるが、市中での無症候の保菌者からの感染伝播を防ぐ方法を検討する必要があるとしているが、具体的な方法に関する提案はされていなかった。

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