あらゆるケア環境の高齢者における尿路感染症および大腸菌(Escherichia coli)菌血症を減少させるための行動介入の有効性:システマティックレビュー★

2019.06.18

Effectiveness of behavioural interventions to reduce urinary tract infections and Escherichia coli bacteraemia for older adults across all care settings: a systematic review


L.F. Jones*, J. Meyrick, J. Bath, O. Dunham, C.A.M. McNulty
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 200-218
背景
英国では大腸菌(Escherichia coli)菌血症の発生率が上昇しており、高齢者においてもっとも高くなっている。リスク因子は、尿路感染症(UTI)の既往およびカテーテル留置である。
目的
高齢者において大腸菌菌血症および/または症候性 UTI を減少させるための行動介入の有効性を調べること。
方法
16 件のデータベース、灰色文献、および参考文献リストに基づいて検索を行った。標題および/または抄録をスキャンし、選択した論文の全文を読んで適格性を確認した。論文の質の評価を、Critical Appraisal Skills Programme のガイドラインおよび Scottish Intercollegiate Guidelines Network 判定法を用いて行った。
結果
21 報の研究をレビューし、いずれも方法論的な質が低かった。6 報の研究において、多面的病院介入(教育、監査およびフィードバックまたはリマインダーを含む)の実施によりUTI が減少したが、3 報でのみ有意性が報告されていた。1 報の研究はカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)が 88%減少したと報告していた(F[1,20]= 7.25)。別の 1 報の研究は、CAUTI がフェーズ I の間に11.17 件から 10.53 件に減少し、フェーズ II の間に 0.39 件減少したと報告していた(χ2 = 254)。第 3 の研究は、患者週あたり UTI が減少したと報告していた(リスク比 0.39)。オンライントレーニングおよびカテーテル挿入およびケアシミュレーションを用いた 2 報の病院研究では、CAUTIがそれぞれ 33 件から 14 件、および 10.40 件から 0 件に減少した。看護スタッフの増員、地域の失禁専門看護師の関与およびカテーテル抜去リマインダー用ステッカーにより感染症が減少した。大腸菌菌血症の予防について検討した研究はなかった。
結論
研究間にみられた不均一性は、効果的なものとして推奨できる 1 つの介入がないことを意味している。フィードバックを単独で、または教育、監査、またはカテーテル抜去プロトコールを含めた多面的介入に組み込んで用いると、UTI の減少が促進されたため、著者らはフィードバックを検討すべきであると示唆する。多面的教育は効果的であると考えられる。カテーテル抜去プロトコール、スタッフ増員、および患者教育については、さらなる評価が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
英国における大腸菌菌血症が増加し、その 4分 の 3 が市中感染であり、85歳以上の高齢者での発生し、菌血症の約半数は尿路感染症で、死亡率は約 15%に達しており、決して看過できない状況がある。高齢者施設においてこの状況を防止するための方策について文献的レビューを実施したのが本論文であるが、現時点で大腸菌感染症減少のための効果的な定まった方策は見つからなかった。しかしながら、いかなる介入においても、フィードバックを必ず加えることが尿路感染症減少においては確かなようである。感染予防対策全般において言えることであるが、単一ではなく複数の多面的・多方面からの予防策の実施が必要であり、かつこれらを実行する現場へのフィードバックは行動変容を促す上では必須である。複合的な対策により大腸菌尿路感染症が減り、ひいては大腸菌菌血症が減少するものと考えられる。

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