腸内の抗菌薬耐性菌の除菌を目的とする糞便細菌叢移植:システマティックレビューとメタアナリシス
Faecal microbiota transplantation for the decolonization of antibiotic-resistant bacteria in the gut: a systematic review and meta-analysis
V. Tavoukjian*
*King’s College London, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 174-188
抗菌薬耐性は、疾病率および死亡率の増加に関連する深刻化しつつある世界的な問題の 1 つであり、医療へ財政的・経済的な著しい負担を与えている。糞便細菌叢移植(FMT)は再発性のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の治療に対して効果的であることが証明されてきたが、腸管の抗菌薬耐性菌の除菌への有効性に関して取り組んだシステマティックレビューはこれまでにない。本研究の目的は、保菌している成人の腸管の抗菌薬耐性菌を、FMT によって除菌できるか明らかにすることであった。データベース(MEDLINE、Embase、CENTRAL、PubMed、CINAHL)で 2018 年 5 月までのエビデンスの包括的な検索を行うことにより、システマティックレビューを実施した。成人における抗菌薬耐性菌の腸内での保菌に対する FMT の効果を評価した、無作為化および非無作為化試験を適格とした。Joanna Briggs Institution の批判的評価チェックリストを用いて研究を評価した。報告の質は、PROCESS および CARE チェックリストを用いて評価した。データは主要評価項目の割合のメタアナリシスとともに、記述的に統合された。
計 52 例の参加者による 5 試験が含まれた。質の低いエビデンスによって、FMT の 1 か月後に半数の症例で除菌が達成され、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対してより高い反応が認められ、耐性メカニズムとしてニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ 1(NDM-1)および基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を有する肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に対してより低い反応が認められたことが示された。成功した症例では、除菌例の 70%がFMT 後の最初の 1 週間以内で達成した。一過性の有害事象はほとんど特定されなかった。
含まれた試験の制約にもかかわらず、本レビューのエビデンスは除菌介入としての FMT の潜在的な有益性を示しており、今後、適切にデザインされたランダム化比較試験によってのみ裏付けることができる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
FMT は出てくる研究のほとんどがポジティブデータである。日本ではまだ広く行われてはいないが、日本人の腸内細菌にどのような特性があり、治療的有効性がどのくらい期待できるのか、非常に興味のあるところである。
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