集中治療室における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の長期アウトブレイク時に消毒用デバイスがシンク排水管定着および患者保菌に及ぼす効果★★

2019.05.10

Effects of a disinfection device on colonization of sink drains and patients during a prolonged outbreak of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa in an intensive care unit


E. de Jonge*, M.G.J. de Boer, E.H.R. van Essen, H.C.M. Dogterom-Ballering, K.E. Veldkamp
*Leiden University Medical Centre, the Netherlands
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 70-74
背景
集中治療室(ICU)のシンク排水管には、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの細菌の定着が高頻度でみられる。
目的
ICU での多剤耐性緑膿菌の長期アウトブレイク時におけるシンク排水管への消毒用デバイスの設置が、細菌のシンク定着や患者保菌に及ぼす影響を検討すること。
方法
2010 年から、多剤耐性緑膿菌のクローン性アウトブレイクが発生していた。2013 年 4 月にICU サブユニット A において、これらのシンク排水管のサイホンを、熱と電気機械的振動によって排水を消毒するデバイスに交換した。他のユニットでは、サイホンを新しいポリ塩化ビニルプラスチック製サイホンに交換した(対照)。2016 年 2 月に、消毒用デバイスを ICU サブユニット B にも設置した。
結果
ベースライン時のシンク定着率は、ICU Aでは 51%、ICU Bでは 46%であった。介入後にICU A における定着率は 5%(P < 0.001)に減少した一方、ICU B(対照)では 62%であった。ICU B に消毒用デバイスを設置後、定着率は、ICU A および B においてそれぞれ 8.0%および 2.4%であった(ベースラインとの比較でいずれも P < 0.001)。ICU 患者における保菌率は、ICU A では入院患者 1,000 例あたり8.3 から 0に(P < 0.001)、ICU B では入院患者 1,000 例あたり 2.7 から 0.5に(P = 0.1)減少した。
結論
ICU のシンク排水管への多剤耐性緑膿菌の定着は、シンクのサイホンに消毒用デバイスを用いることで効果的に制御された。患者における保菌も有意に減少し、このことからシンク排水管は緑膿菌による臨床的アウトブレイクの発生源となり得ること、また消毒用デバイスはこうしたアウトブレイクを阻止する上で有用となる可能性があることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ICU のシンク配水管に定着した緑膿菌が ICU 内でのアウトブレイクの発生源になるという、一見信じがたい結果である。シンク配水管には細菌が定着することは以前から知られているが、患者への感染伝播の源となっていることの証拠は十分ではなく、さらに細菌の検出は原因ではなく結果であるとこれまで理解されていた。本論文はそれを覆し、感染源となりうるという結果である。緑膿菌定着の解決策に使用した装置は熱と振動によりサイホン部分でバイオフィルムを形成する細菌を殺菌するというものである。近年日本でも配水管に取り付けることで熱により配水管内に定着している菌を殺菌できる機器が入手できるようになっており、感染予防効果に関する検討が開始されるであろう。

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*CHEO Research Institute, Canada
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 536-553

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