日本における病院ごとのカルバペネム使用:全国生態学的研究★★
Hospital-by-hospital carbapenem use in Japan: a nationwide ecological study
D. Morii*, R. Kokado, K. Tomono
*Graduate School of Medicine, Osaka University, Japan
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 101-107
背景
日本の医療システムは、1961 年以来、国民皆保険制度に基づいてきた。これまで、全国規模での病院ごとの抗菌薬使用は記録されてこなかった。
目的
全国規模で病院ごとのカルバペネム使用の分布を明らかにすること、ならびに日本で利用可能な病院データから予測モデルを構築すること。
方法
日本政府により公表されているオープンデータを用いて生態学的研究を実施した。カルバペネムによる治療期間の分布(1,000 患者日あたり)を分析し、予測モデルを構築した。粗分布および実測値対予測値の比の分布により、大量使用病院の上位 1%をリスト化し、比較した。病院特性で層別化した 3 つのサブカテゴリー(3 次、2 次救急、および出来高払い制)、および 2 つの年齢群(16 ~ 65 歳および 65 歳超)の患者について解析を行った。
結果
16 ~ 65 歳の年齢群における治療期間中央値は、3 次病院が 7.24日、2 次救急病院が 3.28 日、および出来高払い制病院が 1.42 日であった。65 歳超の年齢群における治療期間中央値は、3 次病院が 17.28 日、2 次救急病院が 14.43 日、および出来高払い制病院が 8.21 日であった。多変量線形回帰分析を行うため、各モデルにおいて、病院特性に基づいて考え得る予測因子から様々な組み合わせの共変量を選択した。
結論
単一の予測モデルがすべての病院に適合することはなかったため、カルバペネムの大量使用病院を特定するには個々の病院に合わせたモデルが必要である。今回の結果は、医療における抗菌薬使用に関する今後の研究において、参考となる基準を提供するとともに、将来の政策にとって有用となる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
オープンデータとして公開されている DPC データを使用し、国内 3,500 以上の医療機関でのカルバペネム系抗菌薬の使用状況を調べた報告である。特性の異なる医療機関を 3 群に分けるとともに、関連する共変量を 4 個設定して解析を行っている。DPC データを使用した点、およびカルバペネム系が使用されやすい医療機関群を一国レベルで調べ得た点でも、貴重かつ非常に興味深い報告といえる。共変量との相関性の結果が意味するところは様々であろうが、本検討は今後の同テーマの研究の出発点・比較対象となるであろう。
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