手術室環境における水を使用しない手指擦式製剤、クロルヘキシジンスクラブ剤、ポビドンヨードスクラブ剤の消毒効果:無作為化対照試験のメタアナリシス

2019.04.15

Antiseptic efficacies of waterless hand rub, chlorhexidine scrub, and povidone-iodine scrub in surgical settings: a meta-analysis of randomized controlled trials


Y-H. Ho*, Y-C. Wang, E-W. Loh, K-W. Tam
*Taipei Medical University, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 370-379
背景
術前の手洗いは、手術部位感染症(SSI)の予防に重要である。クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)製剤とポビドンヨード製剤は、術前手指消毒のスクラブ法として従来から使用されてきた。一方で、水を使用しない手指擦式製剤が、手術室スタッフ用に開発されている。
目的
本研究の目的は、手術室環境において、水を使用しない手指擦式製剤、CHG、ポビドンヨードの消毒効果を、システマティックレビューおよびメタアナリシスにより比較することである。
方法
2018 年 10 月以前に発表された研究を、PubMed、Embase、Cochrane Library のデータベース、および ClinicalTrials. gov registry で検索した。術前手洗いにおいて、水を使用しない手指擦式製剤、CHG、ポビドンヨードの使用による臨床成績を比較した無作為化対照試験を選択した。ランダム効果モデルを用いてメタアナリシスを実施した。効果を評価するために、コロニー形成単位(cfu)、SSI 発生率、製品の好み、遵守率を調べた。
結果
参加者 5,135 名を含む無作為化対照試験 11 件を対象とした。水を使用しない手指擦式製剤群および CHG 群では、残存する cfu 数がポビドンヨード群よりも有意に少なかった。水を使用しない手指擦式製剤群と CHG 群の cfu 数の差は有意ではなかった。水を使用しない手指擦式製剤群と従来の手指スクラブ(CHG、ポビドンヨード)群間で、SSI 発生率に有意差はみられなかった。また、水を使用しない手指擦式製剤は、もっとも有益とみなされ、他の製剤よりも遵守率が高かった。
結論
水を使用しない手指擦式製剤と CHG は、ポビドンヨードよりも消毒効果が高いことが示された。とはいえ、包括的な結果を得るために、一貫した評価項目や的確なグループ分けによるさらなる研究が必要である。さらに、製品の好み、遵守、費用によって、手指洗浄剤の選択も定められる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
従来から報告されていた内容をシステマティックレビューおよびメタアナリシスにより比較した論文である。いかなる場合も見た目に汚れている場合には、まず流水と石けんで予備洗浄が必要であるが水を使用しない手指擦式製剤を使用する前の流水と石けんによる手洗い後は手を十分に乾燥させることが重要である。

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