集中治療室においてオクテニジンを用いた全身清拭による消毒導入後の院内血流感染症および院内バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の減少
Reduction of nosocomial bloodstream infections and nosocomial vancomycin-resistant Enterococcus faecium on an intensive care unit after introduction of antiseptic octenidine-based bathing
S. Messler* , I. Klare, F. Wappler, G. Werner, U. Ligges, S.G. Sakka, F. Mattner
* Medical Centre Cologne-Merheim, Germany
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 264-271
背景
ドイツの集中治療室(ICU)において、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)が出現している。大学病院の 32 床の外科 ICU では、手指衛生や環境消毒の強化に関わらず、院内症例数が増加している。
目的
バンコマイシン耐性 E. faeciumn の負荷を軽減するために、オクテニジンによる普遍的な全身清拭を導入すること。
方法
2012 年 1 月から 2014 年 3 月に、バンコマイシン耐性 E. faecium のスクリーニングを入院時と週 2 回実施した。バンコマイシン耐性 E. faecium 感染症/保菌、および病原体を問わずすべての血流感染症(BSI)について、積極的サーベイランスを実施した。今回の前後比較研究の介入は、標準化されたオクテニジンによる全身清拭とした。バンコマイシン耐性 E. faecium の保菌または感染症の異なるサブグループを設定して、頻度・有病率・罹患密度の統計解析に用いた。
結果
介入前の期間(2012 年 1 月から 2013 年 4 月)に、入院時のバンコマイシン耐性 E. faecium 有病率は患者 100 例あたり 4 例で、院内症例の平均罹患密度は1,000 患者・日あたり 7.55 であった。パルスフィールド・ゲル電気泳動分析では、vanA(3 株)および vanB(2 株)遺伝子クラスターの発現がみられた。介入後の期間(2013 年 8 月 から 2014 年 3 月)には、入院時のバンコマイシン耐性 E. faecium 有病率は患者 100 例あたり 2.41 例で、院内症例の平均罹患密度は 1,000 患者・日あたり 2.61 であった(P = 0.001[介入前対介入後])。介入前の期間にバンコマイシン耐性 E. faecium による院内感染症が 13 例で確認されたのに対し、介入後の期間ではバンコマイシン耐性 E. faecium による院内感染症は 1 例であった。BSI 罹患密度は、介入前は 1,000 患者・日あたり 2.98、介入後は 1,000 患者・日あたり 2.06 であった(P = 0.15)。
結論
新興バンコマイシン耐性 E. faecium の疫学は、入院症例と小集団内伝播が複雑に混在しているようであり、感染制御策を困難にしていた。標準化された清拭レジメンを併用したオクテニジンによる普遍的な全身清拭の実施は、院内バンコマイシン耐性 E. faecium の有意な減少をもたらした。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
クロルヘキシジン浴と同様にオクテニジン浴により VRE の制御が可能かどうかと言うチャレンジングな検討である。この中で、やはり人的資源がひっ迫し、適切な清拭消毒が行えなくなるとアウトブレイクの阻止には繋がらない。清拭消毒による業務量の増大への対応(つまり人材補充)が肝要である。
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