オランダの血液透析室における C 型肝炎ウイルスの伝播:NS5A 遺伝子シークエンス法を用いた詳細なアウトブレイク調査★★

2019.03.12

Hepatitis C virus transmission in a Dutch haemodialysis unit: detailed outbreak investigation using NS5A gene sequencing


E. Heikens* , D.J. Hetem, J.P.W. Jousma-Rutjes, W. Nijhuis, G.J. Boland, N.H. Hommes, O.H.D. Thang, R. Schuurman
* Haaglanden Medical Centre, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 333-338
背景
血液透析は C 型肝炎ウイルス(HCV)伝播のリスク因子の 1 つである。2016 年 12 月に、オランダ・ハーグの透析室 1 室で血液透析を受けている患者 2 例において、血液由来のウイルスに対する毎年のルーチンの管理後、HCV セロコンバージョンが認められた。推定される感染時間の後に、HCV に慢性感染している患者 3 例が可能性のある初発症例として特定された。
目的
患者間の伝播を確認し、感染源を特定すること。
方法
分子的研究および診療記録のレビューを行った。
結果
5’UTR シークエンス法に基づくと、インシデント症例も可能性のある初発症例 3 例のうちの 1 例も、HCV 遺伝子型 2b に感染していることが明らかになった。これらのウイルスの疫学的関連性は NS5A 領域のシークエンス法によりさらに検討された。系統発生解析により、インシデント症例および初発症例は、HCV 遺伝子型 2b を有する無関係の対照とは異なる集団であることが明らかになった。診療記録の詳細なレビューにより、HCV の伝播症例を引き起こした可能性のあるインシデント 2 例が特定された。それらは、高い静脈圧に起因する静脈圧検知式ポートの汚染、または初発患者とインシデント症例の両方が居合わせた 1 回の血液透析セッション中に同時に発生したインシデント 2 例の対応中に、透析室の職員による感染予防策の遵守が不完全であったことである。
結論
本研究により、詳細なインシデントの記録と NS5A 領域のシークエンス法のような最新の分子的研究の組み合わせが、血液透析室で発生した一連の HCV の伝播 2 例の解明をもたらしたことが明らかになった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
血液透析により感染した HCV の 2 例の報告であるが、HCV は血液媒介感染症が主体であり、性的接触、周産期感染、粘膜曝露、大腸内視鏡による感染がこれまでに報告されている。透析患者ではガイドラインに沿って年に 1 から 2 回の感染症検査が実施されるため、HCV 感染が発見される機会が当然増える。これらの原因の多くは職員の手指衛生の不備や手袋の不適切な使用により標準予防策が破綻した結果であることが多い。本例のジェノタイプは 2b であり、NS5A 領域のシーケンス解析によりこの 2 例と発端患者とが一致したことから、詳細な疫学調査を実施したところ、この 3 例が同一日に透析を実施し、その際に発端者の透析回路が凝固したこと、感染者 1 例が透析後に動静脈シャント部分からの出血、さらにもう 1 例の感染者の止血を同一のスタッフが実施していた可能性があり、手袋の交換ができていなかったことも一因として考えられた。透析室での感染対策が適切に実施されているかどうかを再確認する必要がある。

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