食品について考えるべきである:栄養不良のリスクは医療関連感染症のリスクを高める

2019.03.12

Food for thought. Malnutrition risk associated with increased risk of healthcare-associated infection


F. Fitzpatrick* , M. Skally, C. O’Hanlon, M. Foley, J. Houlihan, L. Gaughan, O. Smith, B. Moore, S. Cunneen, E. Sweeney, B. Dinesh, K. O’Connell, E. Smyth, H. Humphreys, K. Burns
* Beaumont Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 300-304
背景
感染症と栄養不良の間には相互関係がある。英国およびアイルランドのガイドラインでは、栄養状態のリスクのスクリーニングにMalnutrition Universal Screening Tool(MUST)を推奨している。MUST スコア 2 以上の患者は、栄養不良のリスクが高いと見なされ、栄養状態の評価への紹介が推奨されている。
目的
医療関連感染症と MUST スコアによる患者の分類との関連を検討すること。
方法
2017 年 5 月に、当院の代表的な 10 病棟で横断研究を実施した。患者の人口統計学的変数、MUST スコア、医療デバイスの有無、医療関連感染症および抗菌薬使用についてデータ収集を行った。
結果
患者 240 例において、医療関連感染症の有病率は 10.4%(25 例)であり、26%(63 例)で栄養不良リスクが高い(MUST スコア 2 以上)と判定された。医療関連感染症を有する患者では、手術の既往(オッズ比[OR]5.5、95%信頼区間[CI]2.1 ~ 14.3、P < 0.001)、中心静脈カテーテル(OR 10.0、CI 3.6 ~ 27.2、P < 0.001)または尿道カテーテル(OR 7.5、95%CI 2.8 ~ 20.0、P < 0.001)の留置、および栄養不良の高リスク(OR 4.3、95%CI 1.7 ~ 11.2、P < 0.001)を有する割合が高かった。MUST スコアが高いことは、多変量回帰分析でも、患者が医療関連感染症を有することの有意な予測因子であった(95%CI 0.2 ~ 0.6、P < 0.001)。
結論
MUST スコアによる評価で栄養不良のリスクを有する患者は、医療関連感染症を有する割合が高かった。ただし、MUST スコアと医療関連感染症との間の時間的関連を検討するため、また様々な医療環境において栄養不良のリスクと医療関連感染症の低減に取り組むための最良の介入法を明らかにするためには、前向き研究の実施が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
監訳者は知らなかったが、MUST という栄養障害のスコアリングシステムは日本でもある程度認知されているようである。本論文はその MUST スコアと医療関連感染症の関係を調べたものである。ただし、その因果関係や、MUST スコアを改善するための取り組みが医療関連感染症を減らすかどうかなどはまだこれからの検討であるとのことである。院内の各種チームとの連携は病院において非常に重要な課題であり、本論文は NST と ICT の協働を促す一助になるのではないだろうか。

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