肥満と喫煙および炎症性関節症の交互作用は人工関節周囲感染症のリスクを増加させる:中国漢民族における傾向スコアマッチング研究

2019.02.22

Interaction of obesity with smoking and inflammatory arthropathies increases the risk of periprosthetic joint infection: a propensity score matched study in a Chinese Han population


C. Xu* , H. Guo, Q. Wang, P. Qu, K. Bell, J. Chen
* General Hospital of People’s Liberation Army, China
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 222-228
背景
肥満を人工関節周囲感染症(PJI)発症の独立したリスク因子の 1 つとして特定した研究は多いが、肥満と PJI 関連の他の因子との相乗的影響は不明なままである。さらに、対象を中国人集団に特化して PJI のリスク因子を調査した研究はほとんどない。
目的
中国人集団において肥満と PJI の関連性を検討し、肥満と PJI 発症に関する他のリスク因子との相乗的影響を明らかにすること。
方法
2008 年から 2015 年の間に、単一施設で初回の人工股関節全置換術または人工膝関節全置換術後に PJI の診断を受けた患者 307 例を特定した。各症例は、試験期間において初回の人工股関節全置換術または人工膝関節全置換術後に PJI を発症しなかった対照例と複数の重要なパラメータを一致させた傾向スコアを用いてマッチングを行った。多変数ロジスティック回帰モデルを用いて、体格指数(BMI)と PJI の発症リスクとの関連性を評価した。年齢、性別、手術の種類、喫煙状態、アルコール摂取、糖尿病、炎症性関節炎、肝疾患および腎疾患について、交互作用解析および層別解析を実施した。
結果
多重ロジスティック解析により、肥満は PJI のリスク増加に関連していることが示された(オッズ比[OR]2.48、95%信頼区間[CI]1.66 ~ 3.69)。連続変数として解析した場合、BMI もPJIのリスク増加に関連していた(BMI において 1 kg/m2 増加につき OR 1.08、95%CI 1.02 ~ 1.14)。交互作用解析において、肥満であり喫煙者の患者は、肥満であり非喫煙者の患者と比較して、PJI 発症の OR が高かった(OR 3.54 対 1.55、交互作用の P 値 = 0.031)。同様に、肥満であり炎症性関節炎を有する患者は、肥満であり炎症性関節炎の既往がない患者と比較して、OR がはるかに高かった(OR 3.9 対 1.55、交互作用の P 値 = 0.029)。肥満と PJI の関連性において、その他の有意な交互作用は認められなかった。
結論
中国漢民族において、肥満は PJI 発症の独立したリスク因子の 1 つである。外科医は、喫煙するまたは炎症性関節炎を有する肥満患者は、PJI のさらなるリスク増加にさらされていることに注意すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
これまで PJI には、手術の既往、糖尿病、栄養不良、病的肥満、CKD、喫煙、アルコール、男性、外傷後の関節炎、炎症性関節炎、免疫不全など多くのリスク因子が指摘されてきた。今回の検討は母集団を中国漢民族とし、肥満およびこれらの交絡因子の影響を解析したものである(ただし手術が施行された全数は明らかにされていない)。各因子の影響の提示の他、BMI が25 ~ 30の場合の PJI のリスク増加の程度も明らかにされており、日本人にも参考になる結果といえる。

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