病院および地域環境において、総コロニー数による全体のバイオバーデンは臨床的重要性が高い病原体の存在を予測しない

2019.02.22

Overall bioburden by total colony count does not predict the presence of pathogens with high clinical relevance in hospital and community environments


F.C. Widmer* , R. Frei, A. Romanyuk, S. Tschudin Sutter, A.F. Widmer
* University Hospital and University of Basel, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 240-244
背景
医療関連感染症(HAI)は何百万もの患者に影響を及ぼし、罹患率および死亡率を上昇させている。HAI の病原体は患者自身の菌叢および環境の両方に由来しており、多剤耐性菌を含む。
目的
異なる種類の高頻度接触面におけるバイオバーデンを測定すること。また培養された菌は菌種レベルまで同定し、臨床的重要性が低いものと高いものとに層別化すること。
研究デザイン
3 次病院 1 施設および都市環境において、バイオバーデンと臨床的重要性が高い病原体の存在との関連性を検討する。
方法
全体のバイオバーデンは、臨床的重要性が高い病原体の検出向上のためトリプチックソイ接触寒天培地および 2 種類の選択寒天培地を用いて評価し、総コロニー数を計測した。分離株は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)を用いて菌種レベルまでルーチンに同定した。臨床的重要性が高い病原体の定義は、米国疾病対策センターがまとめたリストに基づいた。
結果
全体で、477 の表面(うち 153 は病院由来、324 は公的に利用可能な施設または器材由来)から接触寒天培地1,431 枚の培養を採取した。うち73 検体から臨床的重要性が高い病原体が1 つ以上検出された。総コロニー数は臨床的重要性が高い病原体の存在との相関性が乏しいことが確認された。
結論
総コロニー数は臨床的重要性が高い病原体の存在をほとんど予測せず、環境微生物調査の結果を解釈困難にした。MALDI-TOF によって環境由来の多数の分離株を低コストで同定できる。環境汚染に関する今後の研究では、発育した微生物の同定にはMALDI-TOF を用いるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本検討で得られた、臨床的重要性が高い微生物数と総コロニー数との乖離は、我々医療従事者の日常的な感覚とも合っているのではないだろうか。環境微生物調査では目的に沿い、どのような手法を用いてどこまで同定するのかが重要であるが、細菌叢の予想が立てにくい場合も多い。MALDI-TOF の利活用は有用なアプローチとして期待できるものといえる。

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