感染または保菌している同室患者および前入室患者への曝露は、同じ微生物による医療関連感染症のリスクを増加させる

2019.02.22

Exposure to infected/colonized roommates and prior room occupants increases the risks of healthcare-associated infections with the same organism


Yi-Le Wu* , Xi-Yao Yang, Xiu-Xiu Ding, Ruo-Jie Li, Meng-Shu Pan, Xue Zhao, Xiao-Qian Hu, Jing-Jing Zhang, Li-Qi Yang
* The Second Affiliated Hospital of Anhui Medical University, China
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 231-239
背景
医療環境における病原微生物の生存は、医療関連感染症(HAI)の罹患において重要な役割を果たしている。
目的
本メタアナリシスは、病原微生物が同室患者および以前の入室患者(前入室患者)から他の入院患者へ伝播し、結果として HAI のリスクを増加させる可能性があるかを検討するために実施した。
方法
PubMed(1966 年 1 月から)および Embase(1974 年 1 月から)を検索し、2018 年 3 月までの研究を特定した。Newcastle-Ottawa Scale を用いて研究の質の評価を行った。I2 検定を用いて異質性を評価した。より控えめな推定を示すランダム効果モデルを適用した。サブグループ解析、累積メタアナリシス、出版バイアス評価、および感度分析を実施した。すべての統計解析は統計ソフトウエア Stata のバージョン 9 を用いて行った。
結果
33,153 例の被験者を含む 12 件の研究で、感染または保菌している同室患者への曝露によるリスクが報告された。また、49,839 例の被験者を含む 9 件の研究で、感染または保菌している前入室患者によるリスクが報告された。感染または保菌している同室患者(オッズ比[OR]2.69、95%信頼区間[CI]1.61 ~ 4.49)および前入室患者(OR 1.96、95%CI 1.36 ~ 2.68)への曝露は、同じ微生物による HAI のリスク増加に関連していた。感度分析結果では、総合所見の大きな変化は示されなかった。出版バイアスは検出されなかった。
結論
本メタアナリシスにより、感染または保菌している同室患者および前入室患者への曝露は、同じ微生物による HAI のリスクを有意に増加させることが示された。保健当局および病院は、現在の消毒と隔離に関する基準やプラクティスは医療環境における病原体の伝播を阻止するのに十分でないことが多いという事実をより重要視すべきであり、この事実により最終消毒と間欠消毒の強化および HAI 減少のための厳重な隔離が正当化される可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
今回のメタアナリシスで得られた同室患者、前入室患者からの HAI リスク増加は、これまでの研究結果と我々医療従事者の業務上の感覚からも頷けるものであろう。環境の最終消毒の手法、および有用性と限界に関する検討結果も集積されつつあり、最終消毒に関して感染管理担当者と清掃担当者によるバディシステムの有効性を示唆した報告もある。

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