北京の 5 つの大型集中治療室でのスタッフ、環境および患者におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)伝播の前向き調査★
Prospective investigation of carbapenem-resistant Klebsiella pneumonia transmission among the staff, environment and patients in five major intensive care units, Beijing
Zhongqiang Yan* , Yu Zhou, Mingmei Du, Yanling Bai, Bowei Liu, Meiliang Gong, Hongbin Song, Yigang Tong, Yunxi Liu
* Chinese PLA General Hospital, China
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 150-157
背景
中国の 3 次病院 1 施設の 5 つの集中治療室(ICU)におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)の重大なアウトブレイクを受けて、CRKP 保菌/感染患者を対象に前向き調査を実施した。
目的
疫学的に関連する ICU の患者、スタッフおよび環境における CRKP の拡散および伝播について記述すること。
方法
CRKP 感染/保菌症例に対する強化モニタリングを、リアルタイム院内感染症サーベイランスシステムにより実施した。各 CRKP 患者の病床の直接周囲環境、ならびにスタッフの手指/手袋/ガウンについてサンプル採取を行い、CRKP の有無について評価した。抗菌薬感受性検査、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および全ゲノムシークエンシングを用いて、回収された分離株の同定および特性分析を行った。
結果
モニタリングを行った患者 2,750 例中、67 例が新たに CRKP 患者として同定され、患者から CRKP 分離株 11 株が回収された。病床の計 31.34%(67 床中 21 床)において1 つ以上の環境表面が検査陽性であり、環境サンプルの 7.99%(613 個中 49 個)および ICU スタッフサンプルの 3.57%(112 個中 4 個)が CRKP 陽性であった。選択した CRKP 分離株(N = 64)には、検討した抗菌薬のうちコリスチンおよびチゲサイクリン以外で中 ~ 高度の耐性が示された。リアルタイム院内感染症サーベイランスシステムのデータを MLST および PFGE の結果と合わせると、伝播が生じていると考えられる 9 つのクラスターが明らかにされた。これらの CRKP 分離株を全ゲノムシークエンシングにより分析したところ、これらの分離株において複数の抗菌薬耐性遺伝子およびプラスミドレプリコンが共通して広範に認められることが示された。2 つのカルバペネマーゼ遺伝子として blaKPC-2(64個中62個)および blaOXA-48(64個中2個)が同定された。これらの CRKP 分離株は、1 つ以上のプラスミドレプリコンを有していた。
結論
ICU の環境およびスタッフの手指、手袋またはガウンのコンタミネーションが、CRKP 患者で高頻度に認められた。本研究はまた、ICU において環境コンタミネーションと CRKP の細菌伝播との間に関連があるという仮説を支持している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
カルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)が検出された患者の 3 割で周囲環境から回収された検体から CRKP が検出された。本文によると、環境ではベッドリネン、枕、ベッド柵、床、デバイス関連では、鼻腔カテーテル、酸素マスク、吸引器などから主に検出されていた。昨今、環境消毒が話題となっているが、ICU などにおいては、早急に考えるべき課題であると思われた。
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