両側関節の同時関節全置換術は段階的関節全置換術と比べて深部感染症リスクを高めるか?メタアナリシス★

2019.02.22

Does simultaneous bilateral total joint arthroplasty increase deep infection risk compared to staged surgeries? A meta-analysis


C. Xu* , P. Qua, T. Deng, K. Bell, J. Chen
* General Hospital of People’s Liberation Army, China
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 214-221
背景
いくつかの研究が、同時両側関節全置換術または 1 次関節全置換術後に実施する段階的両側関節全置換術を受けた患者を対象に、人工関節周囲感染症の発生率を比較している。しかし、これらの研究は統計学的検出力が不十分であった。
目的
メタアナリシスを実施して、同時両側関節全置換術では段階的両側関節全置換術と比べて深部感染症の発生率が高くなるかどうかを明らかにすること。
方法
すべての研究を、PubMed、Embase、Cochrane Library databases、Web of Science、PEDro、CINAHL、SPORTDiscus、および Scopus から抽出した。メタアナリシスを実施して、同時両側関節全置換術および段階的両側関節全置換術の患者において人工関節周囲感染症の発生率を比較した。
結果
全体で 16報の研究が、同時両側関節全置換術を受けた患者 36,765 例および段階的両側関節全置換術を受けた患者 71,558 例を対象としていた。統合したデータから、人工関節周囲感染症の発生率は同時両側関節全置換術のほうが段階的両側関節全置換術より低かった(0.84%対1.57%、オッズ比[OR]0.57、95%信頼区間[CI]0.49 ~ 0.66、不均一性 I2 = 0%、P = 0.74)。サブグループ解析では、統合したデータから、人工関節周囲感染症には同時両側関節全置換術群と段階的両側関節全置換術群の間で、2 群のベースラインの人口統計学的背景が同様の場合は有意差がないことが示された(4 研究、OR 0.55、95%CI 0.21 ~ 1.40、不均一性 I2 = 0%、P = 0.77)。統合したデータから、同時両側関節全置換術群の人工関節周囲感染症発生率は、段階的手術の間隔が 3 か月以内の段階的両側関節全置換術群と同様であることが示された(3 研究、OR 1.22、95%CI 0.38 ~ 3.88、不均一性 I2 = 0%、P = 0.42)。
結論
同時両側関節全置換術は段階的両側関節全置換術と比較して、術後の人工関節周囲感染症のリスクを高めない。これら2種類の術式を評価するための質の高いエビデンスを得るために、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
膝関節および股関節の両側関節全置換術に関して、同時実施と段階的実施についてどちらを選択するかについては EBM に基づいたガイドラインがない。人工関節周囲感染症は主要な合併症であり、発生した場合の精神的・経済的影響は大きい。これまでの人工関節周囲感染症の発生率についての研究では、症例数が少なく、執刀医によるバイアス(同一執刀医が、1 回の手術で片方の後に反対側の手術を連続的に実施するのか、左右同時に別々の外科医が執刀するのかなど)、手術間隔が異なるなどにより統計学的解析力が不十分であったが、本論文は過去の 16 論文をメタ解析とともに種々のサブ解析を実施しているが。しかしながら、本論文で引用した論文の大半が後向き研究であるため、さらなら大規模な無作為前向き研究が必要である。

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Journal of Hospital Infection (2021) 113, 145-154


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