ギリシャにおける小児患者を対象とした全国を代表する中心ライン関連血流感染症サーベイランスデータの確立

2019.01.05

Establishing nationally representative central line-associated bloodstream infection surveillance data for paediatric patients in Greece


S. Kouni*, M. Tsolia, E. Roilides, G. Dimitriou, S. Tsiodras, A. Skoutelis, E. Kourkouni, D. Gkentzi, E. Iosifidis, N. Spyridis, I. Kopsidas, P. Karakosta, G.C. Tsopela, I. Spyridaki, G. Kourlaba, S. Coffin, E.T. Zaoutis, for the PHIG Investigators
*Center for Clinical Epidemiology and Outcomes Research (CLEO), Greece
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 53-59
背景
医療関連感染症は、疾患状態と死亡の増加をもたらし、費用の増大を伴う。中心ライン関連血流感染症(CLABSI)は、新生児および小児において最も高頻度でみられる医療関連感染症である。
目的
新生児集中治療室(NICU)および小児集中治療室(PICU)ならびに小児腫瘍科における CLABSI 発生率の全国基準となるデータを確立すること。
方法
CLABSI に対する積極的サーベイランスを 2016 年 6 月から 2017 年 2 月にかけて実施した。NICU 14 施設、PICU 4 施設、および小児腫瘍科 6 施設が共同で本プログラムに参加した。サーベイランスのための中心ライン、中心ライン使用率、CLABSI イベント、および CLABSI 発生率の定義は、米国疾病対策センター(CDC)による 2014 年の全米医療安全ネットワークの基準に基づいた。医療記録の評価を、中心ライン留置日、患者日、および分離微生物の感受性を算出するために毎日行った。
結果
CLABSI エピソード計 111 件が記録された。CLABSI の全発生率は平均で 1,000 中心ライン留置日あたり 4.41、中心ライン使用率は 0.31 であった。CLABSI 発生率は 1,000 中心ライン留置日あたり、NICU で 6.02、PICU で6.09、および小児腫瘍科で 2.78 であった。計 123 の病原体が分離された。最も高頻度に分離された病原菌は腸内細菌科細菌(36%)であり、次いでグラム陽性球菌(29%)、非発酵グラム陰性菌(16%)、および真菌(16%)の順番であった。全体でグラム陰性病原菌の 37%が第 3 世代セファロスポリン系に、また 37%がカルバペネム系に耐性であった。
結論
小児患者における全国を代表する CLABSI 発生率が明らかになった。これらのデータは、感染制御および抗菌薬管理という介入をデザインおよび評価するための基準として利用でき、ベースラインデータとして有用となり得るであろう。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
通常 CLABSI の原因菌は黄色ブドウ球菌をはじめとするグラム陽性球菌が多いことが知られているが、本調査では大腸菌などの腸内細菌科細菌が最も多く、またその 37%がカルバペネム耐性という驚くべき結果であった。もともとギリシャは多剤耐性グラム陰性桿菌が世界的に見ても多い国であることは知られている。日本とはかなり異なる疫学だと思われるが、このようになった原因を知ることや、このような状況を改善することは、今後我々が直面することになるかもしれない多剤耐性菌のまん延の防止に役立つであろう。

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