経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎:米国における National Inpatient Sample データベースの横断的研究
In-hospital infective endocarditis following transcatheter aortic valve replacement: a cross-sectional study of the National Inpatient Sample database in the USA
I. Yeo*, L.K. Kim, S.O. Park, S.C. Wong
*Icahn School of Medicine at Mount Sinai/The Mount Sinai Hospital, USA
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 444-450
背景
重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術の利用は増加している一方で、経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎は十分に示されていない。
目的
経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎を特定すること。
方法
National Inpatient Sample データベースを用いて、2012 年から 2014 年の間に経カテーテル大動脈弁置換術を受けたすべての患者を特定した。経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎の予測因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰を実施した。
結果
経カテーテル大動脈弁置換術を受けた 41,025 例の患者のうち、120 例(0.3%)が院内感染性心内膜炎を発症した。緑色レンサ球菌(20.8%)が院内感染性心内膜炎の最も頻度の高い原因細菌であり、続いて黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、16.7%)、腸球菌(enterococci、8.3%)であった。経カテーテル大動脈弁置換術後に院内感染性心内膜炎を発症した患者は、感染性心内膜炎を発症していない患者と比較して、死亡(20.8%対 4.1%、P < 0.001)、敗血症性ショック(16.7%対 0.8%、P < 0.001)、心原性ショック(12.5%対 3.4%、P = 0.02)、血液透析を必要とする急性腎障害(16.7%対 1.6%、P < 0.001)、輸血を必要とする出血(29.2%対 11.3%、P = 0.01)、心筋梗塞(12.5%対 2.1%、P < 0.001)、ペースメーカーの永久的な除去(4.2%対 0.05%、P < 0.001)の比率が有意に髙かった。経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎の独立した予測因子には、低年齢(オッズ比[OR]0.92、95%信頼区間[CI]0.89 ~ 0.95)、薬物乱用(OR 48.9、95%CI 6.9 ~ 347.3)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染(OR 7.8、95%CI 1.4 ~ 44.4)が含まれた。
結論
経カテーテル大動脈弁置換術後の患者の 0.3%において、同一の入院期間中に感染性心内膜炎が発生し、結果として死亡を含む有害事象の発生率がより高かった。より低年齢、薬物乱用の履歴がある、または HIV に感染している患者は、経カテーテル大動脈弁置換術後の院内感染性心内膜炎のリスクがより高く、周術期の用心深い予防策が有効である可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
経カテーテル大動脈弁置換術における感染性心内膜炎の疫学に関する重要な報告である。その発生頻度が 0.3%と非常に低いことや原因微生物として口腔内の常在菌である緑色レンサ球菌が多いこと、リスク因子として薬物乱用や HIV などが挙げられていることなど、自然弁の感染性心内膜炎と疫学が類似していることから、その発症機序や予防は周術期の対策というよりも、一般的な感染性心内膜炎の予防策が重要であるように思われる。
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