侵襲性 A 群レンサ球菌によるアウトブレイク:寒天培地による落下菌測定法を用いた医療従事者の会陰部からの菌排出調査★★

2018.12.25

Outbreak of invasive group A streptococcus: investigations using agar settle plates detect perineal shedding from a healthcare worker


N. Mahida*, K. Prescott, C. Yates, F. Spencer, V. Weston, T. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e209-e215
背景
医療環境において A 群レンサ球菌(GAS)感染症のアウトブレイクが発生することがある。 患者への伝播は時に、保菌した医療従事者および/または汚染された環境が関与している。
目的
高齢者ケア内科病棟において 6 か月間にわたり発生した医療関連 GAS 感染症のアウトブレイクの調査および制御について記述すること。
方法
患者 4 例が GAS 感染による敗血症を発症し、臨床的に明らかな感染部位が認められなかった。アウトブレイク対応チームが調査を実施し、GAS 症例の後向きレビュー、前向き症例発見、医療従事者のスクリーニング、およびスワブ採取と落下菌測定法の両方を用いた環境サンプリングを行った。即時に実施した制御策として、感染源の隔離、ならびに塩素系消毒薬と過酸化水素による病棟環境のさらなる洗浄などを行った。
結果
前向き患者スクリーニングにより、咽喉部の GAS 保菌を有する患者が新たに 1 例同定された。落下菌測定法による GAS 陽性は、当該病棟の医療従事者 1 名の存在と強く関連することが認められ、その後この医療従事者が会陰部に GAS 保菌を有することが明らかになった。この医療従事者が使用していた、病棟に隣接する控え室にある布張りの椅子にも汚染が検出された。全体で、無症状の医療従事者 3 名に咽喉部の GAS 保菌が、医療従事者 1 名に会陰部と咽喉部の両方の保菌が認められた。すべての分離株は、タイピングにより emm 28 遺伝子型であることが判明した。
結論
本稿は、内科病棟で発生した GAS 感染症アウトブレイクの調査において、アウトブレイクの発生源の同定における落下菌測定法の使用の有用性を示した初のアウトブレイク報告である。本報告に基づいて著者らは、GAS によるアウトブレイク時に医療従事者のスクリーニングを行う場合は咽喉部と会陰部のサンプル採取を行うことを推奨する。臨床区域ならびに隣接する控え室には、GAS などの病原性細菌がこうした環境を汚染する可能性があるため、柔らかな布張りの家具は置くべきでない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
GAS は健常人の咽頭や皮膚で時に検出されるグラム陽性球菌で、本菌による咽頭炎以外に、菌血症、壊死性筋膜炎や劇症型A 群レンサ球菌感染症(STSS)などの重症感染症を引き起こす。本菌は症状の有無にかかわらず、保菌者の咽頭からの飛沫感染や感染創部や皮膚病変から接触感染により伝播する。これまで、シャワーやビデなどの器具やカーテンなどの環境が供給源となり、医療従事者の手指を介したアウトブレイクの報告が多数ある。本論文では積極的な環境調査および保菌者調査を実施した。病棟での落下細菌検査を連日(7 日間)実施し、GAS の保菌者の存在を疑い、特定の医療従事者の勤務と落下細菌陽性結果とが有意に関連性があること、さらに咽頭および会陰部からの分離株とアウトブレイク株とのタイプが一致したことから、医療従事者からの伝播と判明した。

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