韓国の集中治療室における 10 年間にわたる器具利用率の動向:サーベイランスの新しい側面としての器具利用率★

2018.11.24

Trends in device utilization ratios in intensive care units over 10-year period in South Korea: device utilization ratio as a new aspect of surveillance


E.J. Kim*, Y.G. Kwak, S.H. Park, S.R. Kim, M.J. Shin, H.M. Yoo, S.H. Han, D.W. Kim, Y.H. Choi, J.H. Yoo, KONIS Steering Committee
*Ajou University School of Medicine, Republic of Korea
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e169-e177
背景
医療器具関連感染は患者安全に関連する重要な課題の 1 つである。医療器具関連感染率を低下させるためには、不必要な器具の利用を減らすことが重要である。
目的
Korean National Healthcare-associated Infections Surveillance System(KONIS)を通じて収集された、任意参加した病院の 10 年にわたる器具利用率の経時動向を検討すること。
方法
本研究には 2006 年から 2015 年に KONIS に参加した集中治療室 190 室における器具利用率が含まれた。器具利用率は、器具利用日数対患者入院日数の比率として算出した。プールした器具関連感染発生率および器具利用率は参加した毎年算出し、1 年ごとの動向を分析した。
結果
1 年ごとの人工呼吸器利用率は 0.40 から 0.41 へと有意に上昇し(F = 6.27、P < 0.01)、尿路カテーテル利用率は有意差はないものの 0.83 から 0.84 へと上昇し(F = 1.66、P = 0.10)、中心ライン利用率は 0.55 から 0.51 へ低下したものの有意差はなかった(F = 1.62、P = 0.11)。サブグループ解析において、「内科 ICU」(F = 2.79、P < 0.01)および「900 床超の病院」(F = 3.07、P < 0.01)は人工呼吸器利用率の有意な上昇に関連していた。
結論
韓国において、人工呼吸器利用率は 1 年ごとの有意な上昇傾向を示した。尿路カテーテル利用率および中心静脈ライン利用率は、有意ではないが低下傾向を示した。医療器具利用率を確実に低下させるためには努力が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
高度医療は多くの医療器具を長期にわたって体内に挿入あるいは装着することとなり、その結果器具が微生物の侵入門戸となる。侵入した細菌は、そこで定着増殖し、細菌感染症を引き起こし、時に致命的な感染症をとなりうる。したがって、血管内留置カテーテル、尿道留置カテーテル、挿管による人工呼吸器などの使用は、医療器具関連感染症と密接に関係し、その管理については徹底した感染対策が必要となる。しかし、根本的にはこれらの医療器具を使用しない、あるいは使用してもできる限り短期間で抜去することが、医療器具関連感染症を起こさないための最良の方法である。本論文では 300 床以下の施設は組み込まれておらず、参加施設は韓国の全病院の約 62%であり、患者の重症度が不明など、母集団に偏りがあるため、この結果でもって韓国全体を語ることはできないが、主要な急性期病院での状況を知ることはできる。

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