背景に応じた抗菌薬の最適化:オーストラリアの遠隔地の病院環境に関する面接による質的研究
Context-sensitive antibiotic optimization: a qualitative interviews study of a remote Australian hospital setting
J. Broom* , A. Broom, E. Kirby
* University of Queensland, Australia
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 265-269
背景
抗菌薬の最適化は、早急に取り組むべき国際的な課題である。機能する抗菌薬適正使用支援プログラムを保有する要件を含む規制の枠組みは、現在では、病院の領域を超えて、国内的・国際的に遍在する。とはいえ、医療は、結局のところさまざまな施設環境や社会的背景の中で提供される。特殊な医療環境において、抗菌薬の最適化対策の実施が不適切であったり、最適化の試みに対して逆効果になったりすることがあるという新たなエビデンスがある。
目的
オーストラリアの遠隔地の医療施設における抗菌薬使用とその環境での最適化戦略に関して、医療従事者の経験と見解を提示すること。
方法
オーストラリアのクイーンズランド州の遠隔地の病院 1 施設の医師、看護師、薬剤師を含む医療従事者 30 名対象に、質的な半構造化面接を実施した。
結果
分析によって、抗菌薬最適化のための主要な課題として 4 つのテーマが特定された。(i)外部から推進される抗菌薬適正使用支援、二の次になる地域に関する情報(ii)地域集団におけるリスク増大に関する認識、治療失敗とそれに続く抗菌薬過剰使用に対する重圧(iii)抗菌薬適正使用支援の障壁とみなされる医療階層構造を含む専門家間の関係力学(iv)一時的な代理職員が多数を占める臨床従事者、ならびにその他のプロセスの問題が重大な障害として認識された。
結論
ケア、施設の資源や構造上の制約、特定の集団の特異性(それに続く臨床上の“専門技能”)という状況に、抗菌薬規制と診療改善策が適合かつ配慮されていなければ、一般的にみても、成功する可能性は低いという結論が、当該施設における医療従事者の認識から得られた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
遠隔地医療では必ずしも感染症の専門医がいるとは限らない。国内津々浦々に抗菌薬適正使用を浸透するためには、医療圏の抱える課題を認識して改善を行う必要がある。
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