新生児集中治療室(NICU)の大規模改修による常在メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の持続的伝播阻止の成功:介入研究の結果
Successful termination of sustained transmission of resident MRSA following extensive NICU refurbishment: an intervention study
A. Semple*, E. O’Currain, D. O’Donovan, B. Hanahoe, D. Keady, U. Ní Riain, E. Moylett
*National University of Ireland, Ireland
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 329-336
背景
新生児敗血症は、世界的に新生児病棟における罹患および死亡の主要原因である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は、その主要な原因病原体となりつつある。多くの新生児病棟で、乳児における保菌および感染症の流行が認められ、その根絶は極めて困難なことが多い。
目的
新生児病棟の改修およびデザイン変更が MRSA 保菌の流行および感染症に及ぼす影響を評価すること。
方法_
アイルランド西部にある大規模大学付属教育病院 University Hospital Galway のレベル 2 ~ 3 の 14 床の1新生児病棟において 8 年間にわたる後向きレビューを実施した。新生児病棟の改修前後における各 4 年間のサーベイランス、保菌および感染症に関するデータを報告する。2008 年から 2015 年までの期間について、MRSA による保菌または感染症を有したすべての乳児に関する臨床的および微生物学的データを収集した。MRSA 分離株について分子タイピングデータを入手できた。分割時系列分析を用い、病棟改修を介入として分析した。
結果
当院の新生児病棟には、常在 MRSA 株の流行による持続的な伝播パターンが認められ、標準的な感染制御介入の反復実施にもかかわらず、これを根絶することができなかった。病棟の全面的な改修により、常在 MRSA 株の持続的伝播を止めることができた。当病棟の改修後、保菌率は低下し、活動性の感染症を発症する乳児はいなくなった。
結論
当院の新生児病棟において、病棟の全面的な改修およびデザイン変更により、MRSA 株の流行による持続的な伝播の阻止に成功したことを報告する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
近年、微生物の水平伝播に医療環境表面が大きく関与していることが明らかになりつつある。本研究は NICU における MRSA の水平伝播に、医療環境表面が関係していることを間接的に示唆するものである。
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