マイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)によるヒータークーラーユニット汚染への対処:オーストラリアの Queensland 州における組織化された国際・国内的分野間の連携★★
Responding to Mycobacterium chimaera heater-cooler unit contamination: international and national intersectoral collaboration coordinated in the state of Queensland, Australia
J. Robertson*, S. McLellan, E. Donnan, K. Sketcher-Baker, J. Wakefield, C. Coulter
*Patient Safety and Quality Improvement Service, Australia
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e77-e84
背景
オーストラリアの Queensland 州における開心術後のマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)感染症の index case(発端症例)の診断により、リスクの軽減を図る集中型の協調的対処が促された。
目的
M. chimaera によるヒータークーラーユニット汚染と患者感染に対する公衆衛生上の対処法について記述すること。
方法
M. chimaera によるヒータークーラーユニット汚染の脅威に対処するために、国内・国際的な協議によって公衆衛生部門の戦略が開発された。非結核性抗酸菌の届出と選択された処置に関するデータの統合を実施し、ヒータークーラーユニットの使用の可能性を入院記録によって特定した。水試料採取と試験プロトコールを標準化した。情報公開と患者への通知を行った。
結果
オーストラリアの Queensland 州において、現在までに患者 1 例で播種性 M. chimaera 感染症が診断されている。5 つの病院の LivaNova Stockert 3T ヒータークーラーユニット 12 個のうち 10 個(83%)が、検査で M. chimaera 陽性であった。全体で患者 5,650 例に対し、M. chimaera 曝露の潜在的リスクについて郵送で通知した。遠隔治療コールセンターの使用はわずかであった。他の 2 つのデバイス製造業者により製造された体外式膜型人工肺ヒーターユニットからも M. chimaera が検出され、そのうち 4 個は試運転前の検査で陽性であった。
結論
心臓手術における M. chimaera 曝露の可能性に対する Queensland Health 当局の対処法は、迅速な国際協力によって最適化された。州規模の協力は、接触患者に対する透明性のある一貫したアプローチと、公衆への潜在的リスクに関する情報提供を確実にした。継続的なリスク管理、臨床認識、臨床検査による診断の枠組みが確立された。Queensland 州では M. chimaera 感染症のさらなる症例は特定されていない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
LivaNova Stockert 3T ヒータークーラーユニットの出荷時の非結核性抗酸菌であるM. chimaeraによる汚染は全世界に波及している。全世界で 5,000 台販売されており、うち国内には 500 台程度が販売されている。国内では Queensland Health のような取り組みはなされておらず、対応はすべて各医療機関に依存していることが課題である。
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