バイオフィルムに注意!多様な医療表面上に存在する細菌を含む乾燥バイオフィルム;多施設共同試験★★
Beware biofilm! Dry biofilms containing bacterial pathogens on multiple healthcare surfaces; a multi-centre study
K. Ledwoch*, S.J. Dancer, J.A. Otter, K. Kerr, D. Roposte, L. Rushton, R. Weiser, E. Mahenthiralingam, D.D. Muir, J.-Y. Maillard
*Cardiff University, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e47-e56
背景
医療用のデバイスに関連する湿性バイオフィルムは広く研究されており、医療関連感染(HCAI)とのつながりもよく認識されている。しかし医療現場の環境表面上の乾燥バイオフィルムの存在については、ほとんど注意が払われてこなかった。
目的
病院の環境表面上の乾燥バイオフィルムの出現率、分布、多様性に関して検討すること。
方法
英国の別々の病院 3 施設から、最終的に洗浄済みの 61 の物品を入手した。培養法および走査型電子顕微鏡検査を用いて乾燥バイオフィルムの存在を調査した。バイオフィルム内の細菌の多様性は、リボソーム RNA 遺伝子間スペーサー解析-ポリメラーゼ連鎖反応および次世代シークエンシングを用いて解析した。
結果
61 のサンプルのうち 95%から複数の菌種を含む乾燥バイオフィルムを回収した。走査型電子顕微鏡検査によって乾燥バイオフィルムの存在量および複雑性を確認した。すべてのバイオフィルムは HCAI に関連するグラム陽性菌を含んでおり、サンプルの 58%でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)が発育した。乾燥バイオフィルムは、採取された物品の種類や、どの病棟で採取されたかにかかわらず、物理的組成が類似していた。病院2 施設から採取された乾燥バイオフィルムは主にブドウ球菌性 DNA を含んでいるのに対し、もう 1 つの病院の表面では Bacillus 属菌 DNA がより多く認められ、菌種の優位性には違いが認められた。
結論
医療現場でよく使用される物品において、病原細菌を含む乾燥バイオフィルムは、ほぼ普遍的に存在する。HCAI の伝播における乾燥バイオフィルムの役割は過小評価されている可能性がある。病院の環境表面に対する効果のない洗浄および消毒の実施により、そのリスクがさらに悪化するかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
これまで我々が認識してきたバイオフィルム(いわゆるwet biofilm)は、医療関連感染の約65%に関与するという。一方、乾燥バイオフィルム(dry biofilm)の存在が近年明らかにされ、関連する菌種と HCAI への関与について検討が始まったばかりである。今回、医療機関および採取場所によって差はあるものの、ブドウ球菌、バチルス属が多くを占めたことは、保菌と伝播経路を考えるうえで非常に興味深く、また培養でこの 2 菌種の検出歴がなくとも、HCAI を引き起こしてきた例の一部は、乾燥バイオフィルムで説明できたかもしれないという推測も可能であろう。さらなる検討と知見の蓄積に期待したい。
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