ノルウェーの市中および医療環境におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の疫学および spa 型の多様性
Epidemiology and spa-type diversity of meticillin-resistant Staphylococcus aureus in community and healthcare settings in Norway
F. Di Ruscio* , J.V. Bjørnholt, K.W. Larssen, T.M. Leegaar, A.E. Moen, B.F. de Blasio
* Norwegian Institute of Public Health, Norway
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 316-321
背景
ノルウェーではこの 10 年間に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の発生率に顕著な上昇がみられる。ノルウェーは、MRSA の発生率が最も低い国の 1 つであり、病院環境において積極的な search and destroy 方針が実施されている。
目的
ノルウェーにおける市中感染型 MRSA および病院感染型 MRSA の報告率にみられる傾向を明らかにすること、ならびに病院環境の内外において MRSAの spa 型についてその多様性および循環状況を検討すること。
方法
2006 年から 2015 年にかけて、ノルウェーで報告された MRSA による感染症および保菌についてレジストリに基づく研究を実施した。市中感染型 MRSA および病院感染型 MRSA について spa 型の多様性および数を、生態学的多様性の新規指標(Hill数)を用いて比較した。
結果
本研究期間中、市中感染型 MRSA および病院感染型 MRSA の月あたりの報告率は、それぞれ 6.9 倍および 1.8 倍 に上昇していた。報告率の上昇は、保菌の方が感染症より急激であった。市中と病院の両環境において spa 型の分布は均等でなく、少数の spa 型が大部分を占め、多くは単独であった。spa 型の多様性は、市中感染型 MRSA の方が病院感染型 MRSA より、異なる spa 型の数が多く(685 対 481)、本研究期間に増加がみられた。しかし、大部分を占める主要な spa 型に関連する多様性は同様で、一定を維持していた。市中と病院の両環境において spa 型の推定重複率は高く、spa t002、t019 およびt008 の頻度が最も高かった。
結論
本研究の結果から、ノルウェーにおける市中感染型 MRSA と病院感染型 MRSA の疫学の間には強い関連があることが示唆される。市中感染型 MRSA の増加が速い傾向が今後数年も続くのであれば、医療環境における MRSA に対する現行のガイドラインおよび感染制御策を見直す必要があるかもしれない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
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