アデノウイルスの病院アウトブレイク後に実施した、流行性角結膜炎の一般的な原因であるアデノウイルス血清型 8、19、37 に対するアルコール系溶液の有効性の検討★

2018.11.24

Investigation of the efficacy of alcohol-based solutions on adenovirus serotypes 8, 19 and 37, common causes of epidemic keratoconjunctivitis, after an adenovirus outbreak in hospital


H. Uzuner*, A. Karadenizli, D.K. Er, A. Osmani
*Kocaeli University, Turkey
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e30-e36
背景
手指消毒薬は院内感染予防において非常に重要である。本研究の実施病院においてアデノウイルスによる流行性角結膜炎が頻発しているため、アデノウイルスに対するアルコール系溶液の効果を検討することが必要であった。
目的
手指消毒薬としてよく使用されるアルコール系溶液に関して、アデノウイルス血清型 8、19、37に対する有効性を検討すること。
方法
流行性角結膜炎の一般的な原因であるアデノウイルス血清型に対する、エタノール、イソプロパノール、クロルヘキシジンジグルコン酸塩(グルコン酸クロルヘキシジン)、n- ブタノールおよびこれらの消毒薬の異なる配合剤の有効性を検討した。消毒成分の効果は、EN-14476 に従った定量的懸濁試験法を用いて検討した。消毒薬は以下の通りに調整した。70%エタノール、70%イソプロパノール、70%エタノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン、70%イソプロパノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン、60%エタノール+ 10%イソプロパノール、60%エタノール+ 10%イソプロパノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジン、60%エタノール+ 10%イソプロパノール+ 1% n- ブタノール。消毒薬の効果は 30、60、120 秒の時点で評価した。
結果
60%エタノール+ 10%イソプロパノール+ 1% n- ブタノールにおいて、ウイルスタイターが最も大きく減少した。本溶液はアデノウイルス血清型 8、19、37 を、それぞれ 2.5 log10、3 log10、2.5 log10 減少させた。ウイルスタイターの減少が最も少なかったのは、70%エタノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンおよび 70%イソプロパノール+ 0.5%グルコン酸クロルヘキシジンであった。これらの配合剤は、アデノウイルス血清型 19、37 を 1.62 log10 減少させた。すべての消毒薬は、EN-14476 によって効果の下限とみなされる 4 log10 を満たさないレベルの有効性を示した。
結論
本研究で使用したアルコール系溶液は、アデノウイルスの各血清型に対して十分な効果が認められなかった。さらに研究を行い、別のアルコール系溶液の効果を調査する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
エンベロープを持たないアデノウイルスは消毒薬に比較的抵抗性であるとされるが、血清型ごとの効果を調べた報告は非常に少ない。今回の報告では低濃度のn- ブタノールの添加がエタノールの効果を強める結果となったが、n- ブタノールの添加が実用的であるかを含め、今後のさらなる検討が待たれる。

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