病院内の単一集中治療室における手洗いシンク利用行動の分析★

2018.11.24

Characterizations of Handwashing sink activities in a single hospital medical intensive care unit


M. Grabowski*, J.M. Lobo, B. Gunnell, K. Enfield, R. Carpenter, L. Barnes, A.J. Mathers
*University of Virginia, School of Medicine, USA
Journal of Hospital Infection (2018) 100, e115-e122
背景
手洗いシンクの排水管は、院内アウトブレイクにおける抗菌薬耐性細菌の潜在的なリザーバであると示されることが増えつつある。しかし、このような感染を促進する可能性のある行動パターンは、いまだに不明である。
目的
集中治療室(ICU)において、多剤耐性グラム陰性菌のシンク排水管をリザーバとした定着および患者への院内伝播を促進する可能性のある行動を明らかにすること。
方法
大学病院 1 施設にある ICU の 4 つのシンク(病室 2 室および患者用化粧室 2 室)において、人感センサー付きカメラにより捕捉した匿名化された行動と、定期的な直接観察を組み合わせた質の高い調査を実施した。
結果
病室(3,625 件)および付属の化粧室(1,185 件)について、60 日間にわたりシンクに関するビデオ 4,810 件の分析を行った。カメラが作動したがシンクの利用行動は発生しなかった偽陽性率は 38%(4,810 件中 1,837 件)であった。行動の分析を行ったビデオ 2,973 件中、観察された行動は 5,614 件で、評価の結果、37.4%が医学的ケア、29.2%が付随する行動、17.0%が手指衛生、7.2%が患者栄養、5.0%が環境ケア、4.2%が非医学的ケアであった。手洗いは全行動のわずか 4%(5,614 件中 224 件)であった。その後に得られたビデオ 2,748 件のサブ解析からさらに 56 種類の行動が分類され、それらにおいては、細菌の増殖を促すような、様々な栄養物がシンク内に廃棄されていた。
結論
ICU の手洗いシンクでは、手指衛生以外のいくつかの行動が日常的に行われていた。これらの行動は、院内伝播および排水管内での細菌増殖の促進をもたらす機序となる可能性がある。シンク排水管が多剤耐性細菌伝播のリザーバとなり得ることが明らかになったことから、病院のワークフローおよびシンク利用におけるデザイン変更が必要と考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
近年カルバペネム耐性腸内細菌科細菌などのアウトブレイクでシンクが関係している可能性のあることが度々報告されている。本研究は「手洗い」シンクで実際にスタッフが何を行っているかをビデオカメラを用いて検討した研究で、実際には器具の洗浄や栄養剤の調整など手洗いとは関係のない行動が行われていた。日本でも手洗いシンクとそれ以外のシンクの使い分けを指導する機会が多いと思われるが、仮に区分していたとしても、実際にはそれは遵守されていないのかもしれない。非常に面白い着眼点の研究である。

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