外来診療におけるリアルタイムの手指衛生通知機械学習システムの実施可能性

2018.10.19

Feasibility of a real-time hand hygiene notification machine learning system in outpatient clinics


R. Geilleit*, Z.Q. Hen, C.Y. Chong, A.P. Loh, N.L. Pang, G.M. Peterson, K.C. Ng, A. Huis, D.F. de Korne
*KK Women’s and Children’s Hospital, Singapore
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 183-189
背景
入院環境における手指衛生遵守を改善するために様々な技術が開発されている。しかし、外来診療における手指衛生遵守を改善するための機械学習技術の実施可能性については、ほとんど知られていない。
目的
外来診療においてリアルタイム手指衛生通知機械学習システムを実施した場合の有効性、使用者の経験、および費用を評価すること。
方法
混合法による著者らの研究では、臨床医に対して初回患者接触の直前に手指衛生を行うよう自動的に通知を行うため、多職種チームにより赤外線検知センサーシステムを共同作成した。通知技術による効果は、ベースライン(通知なし)における手指衛生遵守率を、手指衛生が実施されるまで継続するリアルタイムの音声通知(介入 I)または 15 秒間続く通知(介入 II)と比較することで評価した。毎日のブリーフィングや半構造化された面接において、使用者の経験に関する情報収集を行った。システムの実施費用を算出し、現行の観察監査プログラムと比較した。
結果
ベースラインにおける初回患者接触前の手指衛生実施率の平均は 53.8%であった。手指衛生が実施されるまで継続するリアルタイムの音声通知により、全体的な手指衛生実施率は 100%に上昇した(P < 0.001)。最長 15 秒の音声通知の場合、手指衛生実施率は 80.4%(P < 0.001)であった。使用者は、リアルタイムでの通知の重要性を強調し、試作品で実施することにより、技術上の実現可能性の向上に貢献した。機械学習システムの年間運営コストは、推定で観察監査プログラムより 46%低かった。
結論
リアルタイムの手指衛生通知が実施できる機械学習技術は、手指衛生の改善およびモニタリングの両方において費用効果の高い有望なアプローチとなり、外来環境においてさらに開発を進める価値がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
これはすごいなぁ、というのが第一印象。機械が外来診療における医師の手指衛生をモニタリングし、手指衛生を行うまでブザーが鳴り続けるシステムの手指衛生遵守率は 100%(そりゃそうだろう)、15 秒間ブザーが鳴り続けるシステムの遵守率は 80.4%(よくブザーを無視できたなと感心するが)であったということだ。機械もすごいが、このシステムを導入できた病院もすごいなぁ、と思う。普通は医師が大反対しそうなものだ。感染防止策の遵守率を上げるにも、やはりこういうテクノロジーの力を借りなければいけないのだろうか。

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