医療関連感染に起因する入院期間延長の推定:統計的方法論によるシステマティックレビューおよびメタアナリシス
Estimating excess length of stay due to healthcare-associated infections: a systematic review and meta-analysis of statistical methodology
S. Manoukian*, S. Stewart, S. Dancer, N. Graves, H. Mason, A. McFarland, C. Robertson, J. Reilly
*Glasgow Caledonian University, UK
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 222-235
背景
医療関連感染(HCAI)は世界中の何百万人もの患者に影響を及ぼしている。HCAI は、主に入院期間を延長させることで医療費の増加を生んでいるが、これらの費用の算出は時間依存性バイアスのために複雑になっている。費用対効果の高い感染予防策(IPC)に確実に投資するためには、HCAI に起因する入院期間延長の正確な推定が不可欠である。
目的
HCAI を有する患者と有さない患者で生じた入院期間の差を推定するために用いられてきた主な統計的手法を特定するとともに、それをレビューすること。さらにすべての統計的アプローチの潜在的なバイアスを明らかにし考察すること。
方法
データベースとして PubMed、CINAHL、ProQuest および EconLit を用いて、1997 年から 2017 年 4 月までのシステマティックレビューを実施した。本試験に合うように調整したNewcastle-Ottawa Scale(NOS)を用いて研究の質の評価を行った。統計学的方法は、時間固定型または時間依存型に分類されたが、前者は時間依存性にバイアスを生じていた。延長した入院期間(推定値)が研究によってどの程度異なるかを示すために、2件のメタアナリシスを例として取り上げた。
結果
延長した入院期間を算出している研究として、92 個が抽出された。大半の論文は時間固定法を採用していた(75%)。NOS によると、時間依存法を用いた研究は質が高い。時間固定法を用いた研究は、HCAI に起因する入院期間延長を過大評価している。メタアナリシスの実施は、研究デザインおよび報告形式が様々であるため難易度が高い。研究間の差異は、母集団の不均一性、症例定義、原因微生物、薬剤感受性によってさらに大きくなった。
結論
方法論は過去 20 年にわたり発展してきたが、時間固定法に依存したエビデンスがいまだにかなり多く存在している。費用対効果の高いIPCへの投資について情報を提供するためには、確固たる推定が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療関連感染によって入院期間が延長し、それによる医療費がかさむという報告は数多く存在するが、解析にあたって、延長した入院期間を正確に推定するのは実は難しい。今後、時間依存型の手法による知見が蓄積されるとともに、現実的な妥当性の評価が望まれる。
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