3 次病院におけるビデオモニタリングによる異なる職種の医療従事者による接触予防策の遵守率★★
Adherence to contact precautions by different types of healthcare workers through video monitoring in a tertiary hospital
Y. Katanami*, K. Hayakawa, T. Shimazaki, Y. Sugiki, S. Takaya, K. Yamamoto, S. Kutsuna, Y. Kato, N. Ohmagari
*National Centre for Global Health and Medicine, Japan
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 70-75
背景
接触予防策は、多剤耐性微生物の伝播を予防するために必要とされるが、その遵守率に関する報告にはばらつきがある。本研究ではビデオモニタリングを用いて、異なる職種の医療従事者における個人防護具(PPE)使用の遵守率を評価した。
方法
本観察研究は、2016 年 7 月から 2017 年 3 月にかけて 781 床の 3 次病院で実施した。スタッフが PPE を装着する区域にカメラを設置した。感染制御チームがビデオの観察を行い、遵守率を評価した。
結果
全体で PPE 装着の機会 1,097 件が観察された。観察されたスタッフのほとんどは看護師および看護助手(1,097 件中 880 件、80.2%)であった。全体で、適切な PPE 装着の遵守率は 34.0%であった。看護師/看護助手の遵守率(858 件中 239 件、27.9%)は、感染症専門医(18 件中 18 件、100%)および清掃スタッフ(49 件中 42 件、85.7%)より低かった。毒素が検出されたクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症に対する PPE 使用の遵守率は、毒素が検出されなかった C. difficile 感染症および多剤耐性微生物による感染症に対する場合と比べて有意に高かった(いずれも P < 0.001)。要介助の患者に対しては、介助不要の患者に対する場合と比べて遵守率が有意に高かった(P = 0.018)。集中治療室では集中治療室以外の病棟と比べて、遵守率が低かった(27.6%対 36.5%、P = 0.006)。
結論
ビデオモニタリングは、直接観察の場合よりも多くの PPE 使用機会の観察を容易にし、PPE 使用における遵守率のモニタリングにとって有用なツールである。接触予防策の遵守率は職種によってばらつきがあったが、全体的な遵守率は不十分であった。看護師でみられた低い遵守率は、ケア実施の頻度が高いことによると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
耐性菌やクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は代表的な院内感染であり、死亡率や医療費を増加させる。これらの患者への感染予防策は「接触予防策」であることは誰もが知っている。しかしながら、認識している割には、その遵守率は決して高くはなく、30%程度である。日本における 3 次病院における接触予防策の遵守率を検討したものである。ビデオカメラ記録によりモニタリングしている点で監視効果が影響する直接観察よりも、より現場の現実的な状況を反映している。接触予防策は手技が煩雑であるため、ケア頻度が増えると遵守率が下がるのは容易に理解できる。また、職種別については観察数が極端に異なる。このことは、看護職の患者との接触頻度の多さを意味する。一方、医師の高遵守率をそのまま評価できないかもしれない。すなわち感染症科の医師という感染への意識の高い医師であるというバイアスがかかっている可能性がある。
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