安全装置は針刺し切創を低減するか?

2018.09.25

Do safety engineered devices reduce needlestick injuries?


J. Schuurmans*, S.P. Lutgens, L. Groen, P.M. Schneeberger
*Jeroen Bosch Hospital, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 99-104
背景
針刺し切創は、世界中の医療従事者がもっともよく直面する健康危害のひとつである。B 型肝炎ウイルス、C 型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどの、針刺し切創と関連する血液媒介感染症の曝露のリスクを最小限に抑えるために、安全装置付きの針が開発されている。
目的
オランダの Jeroen Bosch Hospital において、安全装置の導入が医療従事者の針刺し切創の予防に及ぼす効果を評価すること。
方法
安全装置の導入前後に報告された針刺し切創の発生率を比較した。針刺し切創の根本的な原因を理解するために、安全装置による針刺し切創を報告した医療従事者全員にインタビューを実施した。
結果
安全装置の導入にもかかわらず、針刺し切創の発生率は、導入前に医療従事者 100 名あたり 1.9 名であったのが、導入後には医療従事者 100 名あたり 2.2 名と増加した。安全装置関連の針刺し切創の報告内容をみると、注射針および血糖測定針による切創の件数は有意に減少していた。しかしながら一方で、ナドロパリンカルシウム注射針および輸液針による予期せぬ有意な増加がみられた。切創の原因としてもっとも多かったのは、針の不適切な廃棄と、安全機能の問題であった。
結論
安全装置の導入は針刺し切創の低減に至っていない。安全装置付きの針によって起こる針刺し切創の大部分は、針の安全な廃棄のシミュレーション、安全装置の適切な使用、そして製品設計の継続的な改良を目指した製造業者へのフィードバックによって、防止することが可能であろう。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
安全装置付きデバイスを導入しても、針刺し切創の減少には限界があることは、かねてより本邦でも経験されていたことである。適切に作動させるための教育と習熟のみならず、多角的なアプローチによる向上を継続しなければならないのは本研究の通りである。

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