基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の母子感染

2018.09.25

Mother-to-child transmission of extended-spectrum-beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae


D. Danino*, R. Melamed, B. Sterer, N. Porat, G. Hazan, A. Gushanski, E. Shany, D. Greenberg, A. Borer
*Ben-Gurion University of the Negev, Israel
Journal of Hospital Infection (2018) 100, 40-46
背景
基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL‐E)を保菌する早産児は敗血症のリスクが高く、新生児集中治療室(NICU)でのアウトブレイクをもたらす可能性がある。母親の ESBL‐E 保菌は母子感染の前兆となりうる。しかしながら、妊婦における ESBL‐E 保菌のサーベイランスに関して見解の一致が得られていない。
目的
同一株の ESBL‐E を保菌している母親と乳児のペアを特定し、母親の感染が早産児の ESBL‐E 保菌の増加に影響するか否かを明らかにすること。
方法
本研究は、早産児の母親とその児を対象とした進行中の前向き ESBL‐E サーベイランスにおける 1 年間の分析である。同一の細菌を保菌している母子ペアにおいて、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)による分離株の解析を実施した。病院のコンピューター保存記録から臨床パラメータを収集した。
結果
2015 年 1 月から 2016 年 1 月に、母親 409 例のうち 313 例(76.5%)および全乳児 478 例(100%)を対象に、ESBL‐E 保菌のスクリーニングを実施した。保菌率はそれぞれ 21.5%、14.8%であった。保菌乳児 4 例(5.6%)が遅発性敗血症を発症し、2 例(2.8%)が死亡した。同一の細菌株を保有する母子ペア 25 組を特定し、分離株 10 組のサブグループで PFGE を実施したところ、70%で同一の PFGE フィンガープリントが示された。非血縁の新生児と母親から採取した分離株間に類似性は認められなかった。出生時に保菌していた母親の乳児では、保菌していなかった母親の乳児よりも、ESBL‐E 保菌が有意に早く検出された(P < 0.001)。
結論
当研究区域における母親の ESBL‐E 保菌率および無視できない ESBL‐E 母子感染による NICU 乳児の 保菌率から、母親の保菌サーベイランスとさらなる感染制御介入、またはそのいずれかを検討すべきであることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
保菌している母親から新生児への基質特異性拡張型β‐ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌(ESBL‐E)感染伝播を調べた論文である。伝播経路は、出産時の垂直感染と、その後の接触感染の 2 通りである。保菌率が高いこと、保菌していない母親から生まれた新生児からも高率で検出されていることが確認されたこと、が気になる。

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